はじめて
「はぁ〜やっと?でもほんっと嬉しい、おめでと!」
翌日、華に高瀬さんとのことを報告するとすごく喜んでくれた。少し照れ臭くて、でも喜んでくれたことが嬉しかった。
「もしなんか先輩に嫌なことされたら直ぐに言うんだよ?」
「な、ないよ!高瀬さんは優しいし、かっこいいし…」
「みのりのそのにやけ顔、先輩にも見せてやりたいわ」
「うっ……」
「今日は?」
「……はじめて、一緒に帰り、ます」
「ヒュー!4限終わり?」
「うんっ、高瀬さん今日はグラ整でミーティングだけなんだって」
「よかったねえ」
「うーん、高瀬さんが野球出来ないのは悲しいですけどね」
「あっそこは変わらないのね」
きゃっきゃと話していると辻川さん、と声をかけられ振り向くと間藤さんの姿が。そうだ、間藤さんには何も言わずにわたし……。
「付き合い始めたんだ」
「え、あ、あの間藤さん!わたし」
「ああ、いいよ!だって高瀬先輩、わたしが近寄るとこいつかよって顔してくるんだもん。失礼すぎるでしょ?」
「……そ、うなんだ」
「でも辻川さん、本当にわたしに高瀬先輩のこと紹介してくれようとしたでしょ。だから悔しいけど高瀬先輩は最初からわたしには無理だったってこと。だからどうぞお幸せに」
「……あ、あの」
「ちなみにもうわたし彼氏いるから、辻川さんたちより全然幸せだから!」
「あっ…うん!ごめんね、ありがとうっ!」
間藤さんはそれだけ言うと教室を出て行ってしまった。ドキドキしたね、と華が言ったのに対して私は首をこくんこくんと何度も縦に動かした。正直ビンタくらいされるかと思っていたからほっと息をついた。
「もうこのまま行くの?」
「あっうん、今終わったって連絡あったよ」
「じゃあわたしも行こっと!」
「一緒に帰る?」
「まさか!ちょっと先輩の幸せそうな顔を見に行くだけ」
華と高瀬さん、本当に仲良くてほっこりしちゃうな。いつかわたしも高瀬さんとこういう風になれたらいいなぁ、と思いながら待ち合わせの大学を出た近くのコンビニに移動した。どこかな、とキョロキョロしていると辻川!と声をかけられた。
「げ」
「やぁ先輩」
「田崎、お前なんでいんだよ」
「何でって失礼じゃないですか?ちょっと2人の姿見に来ただけですよ〜」
「じゃあもう見たからいいだろ、帰った帰った」
「あっひどい!」
「高瀬さん、今日は真っ直ぐ帰られるんですか?」
「えっ」
「えっ」
「えっ…?」
「いや待ってみのり、もしかして本当に一緒に帰るだけだと思ってたの…?」
「?だ、って明日土曜日だし、高瀬さん練習朝からありますよね?早く帰ってゆっくりしたほ方が」
「「アホか!」」
「ひえっ」
「もう先輩!?何ならみのり、家まで連れて帰っちゃってくださいよ」
「ああそうだな、ゆっくり進んでいこうと思ってたけどこれじゃ1年経ってもこのままな気がしてきたわ」
「別に1週間だろうが1ヶ月だろうが1年だろうが変わらないっすよ、じゃあ頼みます」
「おう、ありがとな田崎」
「んじゃまた」
そう言って華は行ってしまった。どうやら2人の会話を聞くにただ大学から駅までの道のりを一緒に高瀬さん過ごせるだけだと思っていたのは私の勘違いだったらしい。
高瀬さん家に行く、ってつまりそういう流れになるってこと、だよね。まだ付き合って2日しか経ってないし、第一わたし、初めて、だし。無理無理、絶対無理。
「辻川」
「は、はい!」
「さっきのは半分冗談、直ぐ手出したりしねえから安心しなって」
「えっあ、」
「顔に不安です、無理ですって書いてある」
「っ〜〜す、すみません」
「でも真っ直ぐ帰らす気はない」
「え、と……どこに、行きますか?」
「うち来いよ」
あの、高瀬さん、本当に手、出さないですよね?とは聞けず、でも断ることも出来なくて私は高瀬さんに手を引かれ大学とは逆方面の改札口を出て駅から程近いマンションに吸い込まれるように入っていった。