精一杯


「その辺座ってて」
「はいっ」

高瀬さんの、お家。埼玉の家からは遠いらしくここを借りて一人暮らしをしているらしい。すごい、一人暮らし出来るなんて尊敬してしまうポイントがまた増えてしまった。

シンプルで物もあまり多くない印象、私の部屋より綺麗そうだなぁ、なんて思いながらラグの上に座っているとテーブルの上に麦茶の入ったコップが置かれた。


「あっす、すみません!高瀬さんにこんな!」
「んな畏まらないでいいって」
「ありがとう、ございますっ」
「ん、つーかベッド座っていいのに」
「ベッ!いやあの」
「ふっ、さっきも言ったろ?とって食おうってんじゃないから安心しな」
「……すみません、あの」
「ん?」
「わたし…、経験なく、って……その、まだ怖いって思っちゃって。高瀬さんだからとか、じゃなくて私の経験不足というか」
「あーなるほどね」
「……めんどくさくてごめんなさい」


簡単にそういうことを出来る女の人なら、高瀬さんを直ぐに満足させてあげられたかもしれない。しょんぼりとしていると高瀬さんが頭をガシガシと乱雑に撫でた。


「めんどいことなんてねえから安心しろ」
「………はい」
「とりあえず今日はどこまでしていい?」
「えっ」
「手繋ぐ?」
「えっええええ!」
「そんな驚くことかよ」
「だ、だって高瀬さんの手ですよ!?ボール投げてる大切な手と、そんな」
「お前そうときは饒舌に喋るよな」
「んぐ……」
「ん、手貸して」


そう言われて手を引かれると高瀬さんの手と自分の手が重なる。それだけでも心臓バクバクしているのにそのまま私と高瀬さんの指が交差するように繋がられた。温かくて、ゴツゴツしていて、指の腹にマメも出来てるのを直に感じて思わず涙が出そうになる。


「キスは?」
「っ……し、たいです」
「……やっば、」
「たかせ、さ」


近付いてくる高瀬さんの顔に私は吸い寄せられるように目を閉じるとしっとりとした感触が唇に重なり、キスしてるんだって実感が湧いた途端ぶわって顔に熱が溜まった。唇が一度離れた瞬間、私はぽすんと高瀬さんの肩に顔を埋めた。もう精一杯、だった。


「はず、かし」
「おま、ほんっとやめろ!こんなの今時小学生だってしてんだから!」
「っだって、高瀬さん、だから」
「あーくそっ、信じらんねえ!」

可愛すぎるだろ、と少し苦しいくらいに抱き締められた私は初めて高瀬さんの背中にギュッと腕を回した。その後2〜3回だけ、キスをした。