2004年、春
2004年、春。
春にしては気温が少し低く、桜が散り始めた日のこと。みのりは中学生となり入学式の長い校長の話を聞いていた。
先日までランドセルを背負ってた彼女は周りの同級生と比べても圧倒的に大人びていてそれでいて美しかった。腰の長さまであら艶やかな黒髪、ぱっちりとした目元はまるでマツエクをしてるかのようにまつ毛がくるんと上がり、スッとした鼻筋に線の細い身体付きは誰しもが振り返る。ただ初日から目立っていたのは彼女の容姿だけが原因でもなかった。
「1組…か、」
「あ!確か前にいた子だよね…!?すっごい美人だなぁって思ってたの!」
「…ありがとう、えっと」
「私岡野若葉!」
「岡野さん、私は場地みのり。よろしくね」
「場地さん、よろしくね!あ、私のことは若葉でいいよ!」
「わたしも、出来れば名前で呼んでほしい、かな」
「うん!よろしくね!」
新しい学校、新しいクラス、新しい友達。ここでは平和に生きたい、そう思った矢先バンっと勢いよく扉が開かれ教室に制服をやたらと着崩したリーゼント頭の所謂ヤンキーが入ってきた。みのりは一瞬眉根を寄せたが直ぐに視線を逸らしどうか学校に来なくなりますようにと願う。
ヤンキーなんて、カッコ悪いしバカみたい。喧嘩が強くて将来何かになれる訳でもないのに、生傷作って親を心配させて一体何がしたいのか理解出来ない。
「すごいね、さっき入ってきた子」
「……カッコ悪」
「え?」
「制服も普通に着れない、髪型も普通に出来ない、扉も静かに開けられない、ただの非常識じゃん」
「……ちょ、聞こえちゃうよ、」
「ヤンキーなんてダサいしカッコ悪いでしょ」
「あ?テメー女、黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって!馬鹿にしてんのか!?」
「大きな声出して怒鳴って直ぐに喧嘩腰、挙げ句の果てに喧嘩が出来ない女の子に向かって暴言を吐くのってどう思う?」
「みのりちゃ、」
「テメーいい加減にしろよ、喧嘩出来ねえ弱者は黙って地べたでも這いつくばってろ!」
「…………」
クラスは入学初日から張り詰めた空気が流れる。これが私、場地みのりと松野千冬の出会いだった。