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松野千冬と場地みのりの噂は瞬く間に広がった。もちろん入学初日の口喧嘩が原因ではない、それぞれのもつ個性による噂だ。

松野千冬は喧嘩が強い。先輩にも負けなしの最強だ、と。一方でみのりはいうと才色兼備の高嶺の花だ、と他クラスの同級生並びに先輩たちにまで2人のことは学校中が噂した。
しかしクラスメイトはその噂とは少し違う、ある意味2人をほっとけない状況が多発していた。

「おいクソ女、てめぇ今日も無愛想なブスだな」
「若葉、私の名前ってクソ女だっけ?」
「…みのりちゃん、あまり言い返さない方が、」
「そうだよね、こんな馬鹿無視した方がいいよね。ありがとう」
「あ!?テメー誰が馬鹿だって!?本当いい加減なことぬかしてんなクソ女!」
「次の授業なんだっけ?」
「おい、無視するとはいい度胸だな。表でろお前」
「……腕触らないでくれない?社会に出たらそれはセクハラだしこれで怪我したら私は真っ向からあんたを訴えるから」
「やれるもんならやってみろよ」
「せ、先生だ!先生呼んでこい!」
「場地さんも落ち着いて!」


一触即発。お互いが視界に入ってくれば口喧嘩が耐えず始まりどちらも引く気はさらさらない。先程の2人の噂はあくまでもクラス外の話でしかなく、クラス内では場地みのりに対してはまるでキャンキャン騒ぐ子供っぽい松野千冬と松野千冬に対しては口達者で冷たい目と素っ気ない態度が女王様のような場地みのり、反りの合わない柴犬とシャムネコが威嚇し合ってるようにしか見えず2週間もたてば大体クラスメイトがどう対応すればいいのか分かってくる頃だった。


「おーい千冬!大ニュース!3組に留年してるやつがいるらしいぜ!ダブリ!」



その言葉にみのりは大きく肩を震わせた。何故その話をよりにもよって松野にするんだ…信じられない。周りはやべーってきっと超すげー不良だって!と大騒ぎ、みのりはバンっと机を叩き立ち上がると騒がしかった教室は一瞬にして静まる。と同時に千冬の眉根が深く歪みおい、と声を上げた。

「何でけぇ音出して目立ったことしてんだよ」
「私よりでかい声出してたの誰?」
「あ?」
「あ、そういやそいつの名前、」
「君も喋らないで」
「はっはひ…!」

美人の怒った顔は怖いと言うけれどみのりはまさしくそれで普段よりワントーン低い声と光のない目、鋭い眼光はただの人間からしたら思わずヒッと悲鳴をあげてしまいそうになるくらいに怖かった。千冬はチッと舌打ちをした後に自分の机をガンと蹴り飛ばし教室を出て行ってしまった。


「……頼むよ、圭兄」



追って止めることも出来ない私は千冬の後ろ姿をジッと睨みつけた。