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「はぁ?場地?」
「そ、そう!場地圭介っつーんだけど場地さんと関係あんのかね?珍しい苗字だから双子の兄妹とか言われてもおかしくなさそうだけど」
「ハッじゃああいつのヤンキー嫌いって兄貴からきたってやつ?馬鹿げた話だな」
「え、場地さんヤンキー嫌いなの?」
「嫌いだろ、あいつの俺を見る目、知ってんだろ?」
「…ああ、すごいよなぁ。美人なのが尚更怖さ増すっつーか…なぁ、普通にしてっとまじゲーノージンみたいな顔してんのになぁ」
「どこがだよ」



千冬は1-3の教室まで来ていた。先程までガンつけられてたのは同い年の同じクラスの女、場地みのり。入学当初から千冬にとって目障りで仕方なかった。
あの俯瞰したような目、人を見縊ってる態度……全て向けられたことのないものだった。正直初めて教室に入った瞬間あいつを見て目を疑った。こんなに綺麗な人がタメにいんのかと頭をガツンと殴られた衝撃だった。しかし殴られたのは頭ではなくあいつの言葉だ。俺を小馬鹿にしたようなことばかり言いやがって、……いや俺だけならいい、ポリシーもってヤンキーやってるやつら全員を否定するかのような言葉は聞き捨てならない。

「場地圭介ってどいつだ?」

一度あいつのことは忘れてまずは場地圭介だ、そいつがめちゃくちゃ強え不良だったらしめないと…と気合を入れて扉を開けたが千冬の想像は最も簡単に崩れ去った。そこに居たのは髪をぺったりと7:3…いや8:2…?とにかく見た目ガリ勉!みたいな胡散臭いメガネを掛けた男だった。拍子抜け、なんだよ…こいつ、不良じゃねーじゃん。つーかこいつまじで場地みのりの兄弟なのか…?

「アホらし、帰ろ…」


しかし何故かあの一つまとめの男のことが気になって仕方なかった。放課後も気になってまた会いに行くとそいつは手紙を書いていると言った。しかし文字も酷い汚さで漢字だって間違ってばかり、だけど千冬は案外口の悪いその男が何となく変だけど変じゃない、もっとやつを知りたいと思うようになった。

「あ、なぁひとつ聞いてもいいか?」
「ん?なんだ?」
「場地みのりってお前の双子の姉とか?」
「みのりのこと知ってんのか?」
「知ってるっつーか同じクラス」
「まじか、あいつは俺の妹だ」
「え!あ、……あーそっかお前ダブってんだっけ」
「うるせー」
「はは、そっか兄貴か」
「あいつ口うるせーだろ、特にヤンキーには」
「……ああ、いつも暴言ばっか吐かれる」
「ははは!だろうな!」
「お前の妹だろ?何とかしろよ…」
「いや〜、まあ仲良くしてやってくれよ」
「いやいや無理無理」


じゃあな、と千冬は場地圭介と別れると待っていた友人らと合流し、やつのことを考えながら1人になったその時20人もの暴走族に囲まれた。やってることがカッコ悪い、こんなやつらと俺は違う、1人でも俺はやれる。
そう千冬は思い殴りかかるものの人数の差には到底敵わずボコボコにされた。しかしそんな時だった。


「一人に多数、さらに武器はダサすぎねえ?」



やつは飄々と現れた。そして次の瞬間、ドンッと壁にクソどもを殴りつけこう言った。


「東京卍會壱番隊隊長 場地圭介だ!!」




その鮮烈な強さは俺の全身を奮い立たせるのは簡単で目を疑うような光景だった。1人で10人、最も簡単にやってのけた。

場地圭介は、ーーー場地さんは俺の憧れになった。

「千冬、ペヤング食う?ウチここの5階だからさ寄ってけよ」
「マジっすかうちここの2階ッス!!」
「なんだよ同じ団地かよ」

めちゃくちゃカッケェ人の姿見てその喧嘩はどこで鍛えたのかとか東京卍會のこととかいろいろ聞きてえことが山のようにあったし何より気持ちが滾ってた。だから何も考えず家に着いていって思い出した。

「ただいまー」
「……圭にい、なんでその男連れてきたの」


こいつが場地さんの妹であることを。