2004年、秋。
文化祭のシーズンとなっていた。うちの中学は体育祭よりも文化祭に力を入れる学校で学年別で人気を競うことが恒例となっていた。
「うちのクラスはメイド喫茶!ニコニコしとけば学年一、いや学校一可愛い美女がうちのクラスにはいる!絶対勝てる!」
「……………」
「場地!お前がうちのクラスのエースだ!」
「却下ですね」
えーーーーー!とクラス中わき立つ歓声にみのりはため息をついた。メイド喫茶のメイドがどんなものか知らないけど嫌な予感しかしない。奉仕するなら圭兄だけがいいし…とむすっとした顔をすると学級委員が場地さん!と肩を掴みかかる。正直熱いしうざい。
「たのむ!お願いします!」
「裏方ならいいけど」
「だめだ!だめだめ!絶対表!」
「………やだ」
「くっ……じゃあ何か、何か1つ君の条件をのもう。だからその代わり君もメイドさんになってくれ!」
「………じゃあ千冬もメイドして」
「……は?」
「おお!いいね、松野くん最近髪を下ろしてからだいぶマイルドになって更にマイルドアピールの場所にもなる!」
「いや意味わかんねえから」
「君は案外優しくていい不良だということをうちのクラスは皆んなわかってる。しかし他クラスのやつらは知らないだろう?だから君がメイド服を着て優しいやつだと言うことを」
「だからメイド服着るのが意味わかんねえの!」
それから委員長、いや委員長以外にもみのりにメイド服を着せたい男子から大きな圧を受けた千冬は拒否れない立場となりなんでだぁぁぁ!と叫んだ声は学校中に響き渡ったと言う。
文化祭当日。
「くっ…ふふ、千冬、似合ってるよ、ふふ、」
「お前のこと一生恨むからな」
「私より全然可愛いじゃん、ふふっ、ねえ後でお決まりなセリフ言ってよ」
「ぜっっってーー言わねーから!」
「えーなんでよ、ご主人様?」
みのりが軽く言ったその言葉の破壊力はすごいもので、千冬も思わず顔を逸らした。こいつは自分の顔の良さを分かってねえ。クラスメイトが必死になるのも分かるくらいみのりのメイドコスプレの完成度は凄くてきっと今日何人もの人がこいつのご主人様を聞きたくて列を作るんだろうと思うと千冬は少しいい気持ちにならなかった。
「ちーふゆ、」
「……んだよ」
「写真撮ろ?圭兄に送るから」
「ふざけんな!ぜってー無理!」
「なんでよぉ、千冬可愛いから大丈夫だって」
「可愛かねえわ!」
「だって色も白いし目もくりくりだし、……あれ、千冬ってこんなに可愛い顔してたっけ…」
「っ触んな」
千冬の頬に置いていた手を振り払われたかと思うとそのまま腕を掴まれる。また、ーーまただ。自分からいくのは大丈夫なのに、千冬に触れられると何故か全身が沸き立つようなドキドキが止まらなくなる。
2人の間を微妙な雰囲気が流れ、千冬がいつもより真剣な顔でみのりの名前を呼ぶと視線が交わる。お互いの瞳に、お互いが映った。
「こうやって他のやつに触られんなよ」
「……なんで?」
「いいから」
「千冬はいいの?」
「俺はいい」
「圭兄は?」
「場地さんは家族だろ」
「マイキーくんは?ドラケンくんは?」
「……………」
「わたし、千冬が嫌ならしないよ」
それ以上お互い何も言わなかった。だけどこれまでとは違う、ただ口喧嘩をしていただけの2人ではないことだけは2人とも自覚があった。