2004年、冬
2004年、冬。
「一虎くんに手紙出したの?」
「おー、千冬に漢字チェックして貰ったら今回1つしか間違いなかったってよ」
「ふふ、すごいね。てか私が添削してあげるのに」
「んだよ添削って」
「間違いがないかの確認」
「みのりに内容読まれたくねえし」
大晦日、流石に圭兄もこの日は家にいてゆっくりとした年末を迎えていた。私たちはある程度家のことをし終わって言えば暇を持て余していた。
「そういや最近千冬とどうなんだよ」
「ど、どうって何よ」
「はーん?お兄ちゃんに黙ってもしかしてもう付き合ってたりする?」
「つ、付き合ってなんかない!千冬だもん!」
「動揺スゲェな!千冬も同じようなリアクションしてたわ、お前ら本当似たもの同士だな」
「………そんなんじゃ、ないもん」
最近クラスメイトにもよく言われるようになった。千冬も付き合ってるのか?とか、そういうこと。付き合う、ということは正直よく分からなかった。今と何か変わるんだろうか、……変わりたくない。付き合って変わってしまうなら、いっそこのままでいたい。それがみのりの本音だった。
「まあ千冬もいい男だからほっとくと誰かに取られるかもなぁ」
「……別に、わたしには関係ないし」
「……ふーん?」
会話はそれで終わってしまった。直ぐに圭兄の携帯に電話がかかって来てその後出てくる、と言って行ってしまった。大晦日、1人かぁ…と何やらやたらとお笑い番組ばかり流れるテレビをつけボーッとしてるとわたしの携帯も着信が震えた。表示には松野千冬と出ていた。
「もしもし?」
『あ、おれ』
「表示に出てるから。てかオレ、だけじゃ逆に怪しいですよ千冬くん」
『っせーなぁ電話慣れないんだから仕方ないだろ』
「で?何か用事あった?お兄ちゃんなら今外出ちゃっていないけど」
『……あーー……』
「……?千冬?」
『ちょっと今からコンビニ行かね?……アイス買いに行こっかなって思ってんだけど』
「……アイスとか、この時期寒いじゃん」
『バカ分かってねえ、こたつの中で食べるアイスが美味いんじゃん』
「……仕方ないなぁ、ついてってあげる」
『おお、じゃあ10分後な』
10分後って!バカはどっちよ!女の子の支度の時間舐めすぎでしょ!と慌ててこたつから出て寝巻きを脱ぐ。もちろん家でダラダラしてたみのりは顔もすっぴんだった。でもこの際仕方ない、髪の毛だけある程度整えてメガネをしていこう。服も黒のワイドパンツに短めなニットを着てMA-1を羽織る。これでも急いだ方なのに時間は5分オーバーですでに待っていた千冬におせーと文句を言われた。
「10分は無理って言ったのに電話切れるし」
「そのまま出て来ればよかったじゃん」
「部屋着だったもん!それに髪もぐしゃぐしゃだったし、」
「メガネめずらしくね?目悪かったっけ」
「伊達!顔何もしてないからせめてもと思ったの」
「ンな誰もみてねーって」
「いいの!ん〜寒い〜〜〜」
「なんでマフラーとかしてねーんだよ」
「……忘れてた」
「バカだな」
千冬は横を歩くみのりがあまりに寒そうにしていたので仕方なく自分が使っていたマフラーを掛けると千冬が寒くなるじゃん!と返されそうになる。人の好意を無駄にする気かこいつは、と千冬はマフラーを外そうとする手を掴んだ。
みのりはこうすると少し大人しくなることを秋頃から学んだ。
「お前、腕冷た」
「……冷え性なんだもん」
「うっわ!手つっめて!体温ねえじゃん!」
「あるよ!少しは!」
「ったく……〜〜これは手を繋いでるんじゃなくてお前の手をあっためる為だからな!」
「っ、…………」
「………黙んなよ」
「……千冬、あったかいね」
冬の千冬は温かい、そう感じれたのはこの冬が最後だった。