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「なんか場地さん最近明るいね、環境の変化とかあった?」
「え、そうですか?」
「うん、全然違う。今日は化粧も違う、他部署の男どもが騒ついてたよ」
「あはは、そんな事ないですよ」
「彼氏出来た?」
「あーー……いや、まだ、ですかね?」
「お、怪しげな回答ー」
「じゃ、お疲れ様です!」
「進展あったら聞かせてね〜お疲れ〜」


みのりは退勤すると会社から40分ほど掛けて千冬のお店へと向かう。
あの日から2人は1週間に1〜2回ほどの頻度で会っていた。千冬は不定期休み、みのりは土日休みな為予定は合わせずらい。しかしそれでも会う約束が出来ることになったことがお互いにとって嬉しいことだった。






「こんばんは〜」
「おう」
「あれ、今日一虎くんは?」
「今日は休み」
「そっか、あーー今日も可愛いなぁ」
「他にお客さんいるんだから静かにしてろよ」
「はぁい」


みのりは仕事に戻る千冬を横目で見ながらお気に入りの猫と戯れながら時間が過ぎるのを待った。
すると店内にいた女性2人組の視線を向けられてる気がした。もしかして猫を見たかったのだろうか、と私は無意味に餌コーナーへと移動すると女性2人はレジの方へと向かっていってしまった。なんだ、猫じゃなかったんだと思ったら何やらレジの方から明るい声が聞こえる。気になってこっそり棚の隙間から覗くと千冬と先程の女性陣たちが話をしているようだった。


「ねー松野さん、前言ってた話どうなったぁ?」
「あー……すみません、羽宮の方もそういうの得意じゃなくて」
「えーでも羽宮さんお酒好きって言ってましたよ〜?」
「ね〜?」
「いや酒じゃなくて女の人と話したりするの苦手なんですよ」
「えーやだかわいい〜」
「確かにいつも目あんまり合わないかも…えーーかわいいね〜」


ピントきた。これは、世に言う逆ナン的なものだろう。千冬は中学時代不良をしてた事もあり女子から全然モテてる感じはなくてみのりにもそういうイメージが無かったので正直驚いていた。しかしよく見たらあの頃よりもぐっと身長も伸びているし肩幅とかも思ってるよりしっかりしていて顔は相変わらず童顔だけど黒髪にしてから少し落ち着いて見える。かっこいいんだ、千冬って。


「こっちとしては松野さんだけでもいいですよ〜?今日この後とかどうです?」
「あーーいや今日は」
「直ぐそこにお酒美味しいお店ありますよ?ね?」
「そうそう、松野さんと飲みたいよね〜」
「いや、あの…」
「ごめんなさい!今日は私と行く予定なんです!!」
「!お前、」
「はぁ?何この女」
「松野さんの何なの?」
「わ、わたしは…この人の……か、仮彼女です!!」
「「「はぁ?」」」
「ね、ねぇ!?千冬!?」
「松野さんこの女もしかしてストーカー?」
「違います!」
「怪しくない?この間もいたし」
「やっぱその女だよね?え、松野さんちゃんと警察行った方がいいよ?」
「だからちが、」
「ふっ、…くくっなんだよ仮彼女って、…ばっかじゃねーの、」

千冬が笑うと3人ともポカンとしていた。客である2人に至ってはこんな千冬の姿を見たことがなかったので普段しっかり仕事をしてるギャップにやられたのか赤面していた。一方でみのりは笑ってないでストーカーの方否定してよ!と怒っていた。

「あー、すみません。こいつ、ストーカーではないです」
「あ、は、はい……」
「んで、俺の大切なやつなんでもうこれ以上は勘弁していただけますか?」
「っ………」
「またお客さんとしては、来てほしいです。お客さんのペットへの気持ちは俺も聞いてて楽しかったんで」


千冬のその言葉に2人は何度も首を縦に振りお会計を終わらすと帰っていった。天然たらし……と思いつつもみのりは先ほどの大切なやつ発言にまだ胸がキュンとしてしまっていた。


「片付け手伝えよ」
「……今余韻に浸ってるから無理」
「は?意味分かんねえこと言ってないでお前あっちの戸締りな」
「……う〜〜〜ちふゆ〜〜〜」
「なんだよ、早く」
「すきだばか」
「っな、なん!急に変なこと言うな!」

お互いの真っ赤な顔は見ることなくその場をやり過ごした。その日2人は照れ臭さから一緒に食べた定食の味は感じることが出来なかった。