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「なぁ、……おいてめぇ、お前だよ。そう、あんた。俺のこと拾ってくんない?ナンデモするよ」

平凡だった25年の生活。贅沢は出来なかったけど不自由のない家庭で育ち奨学金を使って四大を卒業した。大学を卒業後は親元を離れ初めての一人暮らしをしながら慣れない新社会人生活を送りながらも休日は友達と買い物をしたりお酒を飲んだり…、彼氏は高校生の頃から出来てなかったけどいつかきっとそういう時は来るんだなんて思いながらも友達の付き合いで合コンに行って連絡先すら聞かれない大人しくてつまらない人間。でも別にそれでよかった。
今日も残業が終わって、疲れたけど金曜日だしお酒とちょっといいコンビニのおつまみ買って家に帰ろう、そう思っていた。しかし目の前に現れたのは絶対に私の日常では交わらない様な、見るからにヤンチャしてます!みたいな見た目の制服を着た男の子に私は、今、声を掛けられたみたいだ。


「え、っと…わ、たし……?」
「そうそう!なぁ家行っていい〜?」
「ハッ!?い、いや貴方何言って」
「家どっち?早くいこーぜー俺腹減ってんだけど。夜ご飯何?」
「あ、あの」
「行っていいよな?」
「…………け、警察呼びますよ」
「あ?出来んの?そんな震えてんのに」
「っ…………」
「いいから連れてけよ、家」


凶悪で横暴なその子の言う通り、警察を呼ぶ勇気なんて私にはなかった。だって今すぐ呼んでも来てくれるまでのタイムロスの間にきっとこの子は逃げるか、下手したら殺される可能性だってある。かと言って目の前の若い男の子から走って逃げられる自信もないし人通りの少ないこの道で助けは呼べない。
ああ、これが詰みってやつ、そんなことを思いながらわたしはもう自宅へと歩み始めてしまった。