事前報告(百サイド)
「百くん、」
「万さん!お久しぶりです〜今日もかっこよくて好き………」
「はいはいいいから。あれ?辻川さんは?」
「あ、お店で待ち合わせなんです!出るときにおかりんに呼ばれてたからもしかしたらちょっと仕事してるのかも。」
「へえ、じゃあ先にやってようか。」
「はい!」
言わずもがなRe:valeだけどRe:valeファンの俺にとってこうやって万さんとお酒を交わす時が来るなんて正直夢にまで見た世界だった。
というと万さんはもうやめなさいって困った顔をするから言わないようにしてるけどいつだって万さんのファンだし大好きだから仕方ない。
「お疲れ。」
「お疲れさまです!今日お仕事早かったんですね?」
「そうなんだよ〜誰かと飲みに行こうかなって思ってからナイスタイミングだよ百くん。」
「へへ、やった。」
ああ、マティーニが似合う万さん。
ニコニコとその姿を見てると気が付いたのかニコッと笑ってそういえば、と口を開いた。
「千との事情って?」
「あ、実はその……ちょっとユキさんとみのりちゃん仲良くなくて。いや仲良くないというか、みのりちゃんがユキさんのこと嫌いで……、」
「嫌い?」
「まあ詳しくは本人の尊厳のために俺からは言えないんですけど、とにかくそういうことになってて!でも千はみのりちゃんと仲良くしたいと思ってて……その、それでみのりちゃんがとりあえず1ヶ月くらい構わないでください的なことを言ったらしくて、今ちょうど冷戦状態になってるってわけなんです。」
ぽかんとした万さんを横目に俺は言ってるだけでも胃が痛くなりそうだった。
まあ…そうだよな。大切な友達のことを嫌ってる人がいるなんて話、誰も聞きたくなんてないはず。なんだか居心地が悪くなってギムレットを一気に飲み干す。するとくっく、と万さんは喉を鳴らして笑い始めた。
「千のこと、嫌いな女子って、くっははは!いたんだ、ははは!」
「………へ?」
「あーおっかしい、はー久しぶりにこんなに笑っちゃった、」
「……嫌じゃなかった、ですか?」
「嫌なものか。寧ろいい気味だ、千って言いたいね。」
上機嫌にマスターに俺の分の酒も一緒に頼むと、お通しのポテトサラダを食べながらまたにやりとした笑みで万さんは口を開いた。
「俺さ、千とは結構長い付き合いになるんだけど、誰しもが千の容姿を褒めて好んで惹かれて、そりゃ若干こっちが惨めになるくらいだったんだけど、」
「万さんだってかっこいいです!」
「はは、ありがと。だから特に女子なんて、まあよく知った人からしたらちょっと変人だからさ、中には嫌いな人がいるかもしれないけど、大体の人は千の見た目だけで近づいてくるから半年やそこらで千のこと嫌いなんて言う人はまずいないよね。」
「……それが初日から嫌いだったらしいんですよね……。」
「尚更面白いや。え、何辻川さんはバンドマンでRe:valeのこと敵対視してたとか?」
「いや、そういうんじゃないんですけど……、」
「それにしてもだ。ますます興味持った、辻川さん」
知ってる、この顔の万さんは何かあまりよろしくないことを。
ドキドキとしながら震えた携帯を確認するとみのりちゃんからもうすぐ着きますとラビチャが入った。
「あ、もうすぐ着くみたいです。」
「楽しみだなあ、」
「あ、あ、あと!これだけは伝えておきますけど!ユキさんは多分みのりちゃんのこと相当気に入ってます!」
「……へえ?」
「だってあんな人に好かれようとしてるユキさん初めて見るし、みのりちゃんの行動ひとつひとつに一喜一憂しててなんかこう……、」
「恋してる?」
「そう!恋してるみたいな……ってあれ?」
「ふーん…へえ………、」
「あ、いや、万さん?」
面白いなあ、と言いながらシルバー・フィズを飲む万さんは俺にとって悪魔の形相をしていた。ユキ、みのりちゃん、なんかごめん!