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「なぁ今日のご飯何?」
「……あの、」
「俺あんたの親子丼気に入ったからまた親子丼でもいいよ、あ、俺トマト嫌いだから出すんじゃねえぞ。あとは〜」
「あの!」
「あ?」
こちらを射抜く目はお喋りな彼の印象よりもかなりキツく喋っていたの遮られたのが嫌だったのか苛立ちすら感じる。でももうこのままでは今夜も泊まらせるわけにはこちらもいかない。
「君は、……」
何で家に帰らないの?親御さんは心配していないの?なんてこと、常識外れたこの子に聞いてもまともな返事が返ってくるはずがない。咄嗟に質問の内容を変えた。
「名前は、なんていうの?」
「あ?それ言う必要ある?」
「だ、だって今日もうちにいる気なんでしょ…?名前も知らない人、家に居させられない」
「……羽宮一虎」
「はねみや、かずとら?」
「あんたは?」
「……わたしは辻川みのり。羽宮くん、」
「一虎でいい。つーか一虎って呼べ」
「……一虎くん、夜ご飯は、ヒレカツ煮ときんぴらごぼうです」
「おー!まじで!?めっちゃ楽しみ!俺多分好きな気するわ!」
彼が素直に笑った姿を見たのは初めてで、年相応の可愛らしい男の子のようだった。
私は直ぐに準備に取り掛かると昨日来たばかりだと言うのに一虎くんは慣れたようにテレビの電源をつけて1人用のリクライニングの座椅子に座りながら携帯を弄っているようだった。ヒレカツはもちろん1人分しかない、私は自分の分は渋々我慢をして予定していた料理を作る。
こんなに怖い見た目をしているのに名前を知ったことでいくらか恐怖心が薄れたわたしはやっぱり最初に一虎くんが言ってたようにバカ女なんだろうなぁと自重しながら涙を流しながら玉ねぎを切り刻んだ。
「うっわーやべぇ!ガストとかに出てくるやつじゃん!」
「そ、うですかね…」
「おう!お前すげぇな!てかお前……じゃなかったみのり、お前の分ねーじゃん」
「……一虎くんがいるなんて思ってなかった、ので」
「俺のせい?なんかごめんな〜まあうめぇからやんねーけど」
まあ、期待はしてなかったけど。本当は一切れくらい譲ってもらえるのかなとか思ったけどきんぴらごぼうと白米(と梅干し)だけの私を気にすることなくヒレカツ煮をガツガツ食べる一虎くんは本当に容赦ない。
というか何で私、昨日まで殺されるかもしれないと思ってたほど恐怖を感じていた相手にこんなに普通に接してしまってるんだろう。
「なぁ」
「はい?」
「その敬語やめろよ」
「…………」
「年上だろお前」
「……一虎くんは、何歳ですか?」
「俺?俺は15」
「じゅ、うご」
「お前どうせハタチくらいだろ」
「……10歳、歳の差あります」
「まじで?ババアじゃん!うける!」
グサッ。15歳、ということは中学生…?学生服を着ていたから若いとは思っていたけどまさか10歳も年下だなんて思ってもいなかった、し、会社では年齢が上の方も多いからババアだなんて思ったこともなかったからショックがデカい。
「じゃあ大人なみのりちゃんは何で俺に敬語なんて使ってんのかなぁ?」
「……そ、れは」
「こええんだろ、でも別に敬語使われないからボコるなんてダセェことしねえって!ま、イラついてたらするかもだけどな!」
「……じゃあ敬語で」
「却下。敬語使ったらボコる」
「……結局ボコられるじゃん」
「そーゆーこと、なぁ米おかわりねえの?」
このヒレカツの汁やべーうめー米が足りねえ!と騒ぐ一虎くんのお茶碗を受け取り炊飯器が初めて一晩で空になるのを感動しながらお茶碗いっぱいに盛って渡すとこれは盛りすぎだろ、俺が力士に見えんのか?と馬鹿にされ段々一虎くんがクソガキに見えてきたのはまだ口にはしなかった。