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それから1ヶ月。私と一虎くんの奇妙な居候生活が始まった。
「なぁみのり〜トリートメントもっといいやつ買ってこいよ。お前は髪染めてないからいいかもしんねえけど俺の髪見ろよ?ブリーチで痛みまくってんの分かるだろ?」
「それくらい自分で買ってよ」
「あ?俺中学生だからバイトも出来ねえのにどうやって金稼げばいいんだよ。身体売れってか?」
「そんなこと言ってないでしょ、昨日言ってたお母さんからの仕送りは?」
「ンなもんもう使ったっつーの」
「え!?5万全部!?」
「ああ、これで負けた」
「……中学生がパチンコなんて行かないでよ…」
「だーかーらートリートメントーそれくらいいいだろ?10歳も年上なんだから買えって〜」
一虎くんはアホでバカだけどヒモの素質はあったんだと思う。な?お願い。そんなことをうるうるとした目で見つめられてしまうと私は悔しいけどわかった、と言わざるを得なかった。別に一虎くんへの恐怖心が0になったわけじゃない。まだ私は彼のことを名前と年齢と家族と不仲で不良チームにいる前科もちいうことしかしらない。でも印象はだいぶ変わった。
まず彼は案外素直だ。私が習慣づいてる"いただきます"も"ごちそうさま"も私が毎回欠かさず言っていたら一虎くんも言ってくれるようになった。後嘘もつかない。私がお願いすることの大抵が嫌だだけどいいときは案外お願いを聞いてくれる。あとよく喋る。これは最初からそうだったっけ。時間を重ねれば重ねるほど一虎くんの年相応な部分が見えていって、私は彼のいる生活に慣れ始めてきてしまった。
「つうかよぉよく毎日仕事なんて行ってられるよなぁ〜おんなじ事の繰り返しでつまんなくね?俺なら無理だわ〜」
「……一虎くんも大人になったら分かるよ」
「じゃあ大人になりたくねえな、俺。つーか大人の定義って何?」
「うーん……なかなか難しいこと聞くね」
「25歳って案外子供か〜まあみのりって処女だろ?」
「っハ!?」
「あれ、違った?お前ぜんっぜんエロくねえから処女だと思ったわ」
つーかこの俺と1ヶ月いてヤらなかった女お前が初めてだわ、なんてけらけら笑ってる一虎くんは間違いなく私なんかよりも経験豊富なんだろうけど!……とはいえ反論出来ない、何故ならそれが事実だからだ。でも別に私は処女であることに焦りも不安もなかった。いつか、その時が来たら、とずるずるとタイミングを失ってしまっただけ。でも実際に他人からそのことをつっこまれると少し恥ずかしかった。
「しょ、処女じゃないです」
「ブッ、なんで分かりやすい嘘つくんだよ、声うわずってんじゃん」
「嘘じゃな、いし」
「ふーん?いつ?どんやなつと?どこでした?」
「なんでそんなこと一虎くんに言わないといけないの!」
「あ?別にいいだろ減るもんじゃないし」
「減る!ダメ!内緒!」
「ほらやっぱ処女じゃん。そっか〜みのりはまだセックス知らないお子ちゃまだったのか〜」
「だからちが、」
「俺が教えてやろっか」
一虎くんはニヤリと笑って何やら新しいおもちゃを見つけたかのようにギラギラとした目をしていた。ここにきて初めて本気の貞操の危機を感じた瞬間だった。