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第一印象は気が弱そうで押せば家まで行けそう。一緒に過ごすようになってからはまじでどの飯でもバカみたいに旨くて何もしない俺に文句も言わず衣食住を提供してくれるクソ便利な女。しかも俺に何も求めない、干渉しないのが更に最高でみのりとの生活は過去一いいと言っても過言ではないくらいに快適だった。ただ強いて言えばセックスだ、1ヶ月もチームで遊び回ってみのりの家に帰ってって暮らしをしてると女とセックスする時間がねえ。いやいや、一緒に住んでる女がいるじゃんって思うだろ?その辺がこれまでの女とは違うところ、みのりとセックスがどうも結びつかない。俺を置いておくくらいだから彼氏はいねえんだろうけどこう……エロいことしてえって気に全然ならなかった。
初めて会ったあの日の涙ーーーあれが影響してるのか。あいつは俺を泣きながら俺のことを憐れんでいるように見えた。正直腹立たしさもあったが、こんな殺されてもおかしくないような状況の中であいつは、あいつの目は何故か悲しんでいるように見えたんだ。
でも1ヶ月も住み始めて、俺はこいつを抱けるかもしれない。そう思って抱く決意をしてベッドに誘ったのに次は恐怖と拒絶による涙を見せられてしまい、初めてのことに驚いた。処女だろ、なんてバカにしていたけどまさか本当に……いやいや、相手は25だぞ。そんな馬鹿な話あるか。しかし目の前の人間が目を覚さないことがこんなにも不安になるだなんて気持ち、俺はこれまで知らなかった。
あー、こいつと俺は住む場所が違いすぎる。クズな俺と真っ当な世界を生きてきたみのり、そもそも一緒に生活してきたこの日々が可笑しかったんだ。そう思い俺はここを出ていく決意をした。
*
「かずとらぁ、ね、もっかいシよ?」
「あ?俺そんな猿みたいに性欲ありあまってるわけじゃねえから」
「っなによ!その言い方!まるで私が猿って言いたいの!?」
「あーあーーーウゼェなヒステリックになんなよ、テメェもうクビ」
「こっちから願い下げよ!このクズヒモ!」
あれから3ヶ月くらい経ったっけ。暑かった日々も終わり長袖を通すほど涼しくなってきた今日、また俺は家を追い出された。つーか家って何だ?
「あーもしもし?昨日番号渡してくれたのって君だっけ?オレ、昨日集会にいた一虎だけど。なぁお前の家って一人暮らし?……あー実家ねはいはい、じゃあ用ねえわ」
スマホの連絡先に残ってる女……あーーもういねえなぁ。今の女もまた電話掛かってきたらうぜぇしバカ女53で登録しておく。そういえばみのりとは連絡先も交換しなかった。
「あーー……あいつの飯食いてえなぁ」
行く宛のない俺はもう二度と行かないと決めていた、求めていたそこへと自然と足が向かっていった。