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「あれ、お前確か宮城の……」
「?え、と…」
翌日、先生と4月の補講分を終え帰ろうと下駄箱に行った時に見知らぬ人に声をかけられた。部活のジャージのようなものを着て宮城、と名前を出したのでバスケ部の人かもしれない。
「あ、わり俺三井寿っつーんだ」
「三井……」
「一つ上な」
「あっ三井先輩っ」
「おう、こんな時間までどうした?」
「あ、私転校してきて補講があったんです」
「大変だな、これから帰り?」
「はい!三井先輩はバスケ部?ですか?」
「おー、宮城から聞いてねえ?」
「りょーちんとそういう話あんまりしなくて」
「まじかよ、自分の先輩の紹介くらい彼女にしとけっつーんだよなぁ」
「……彼女?」
「あれ、ちげーの?」
どうやら三井先輩はいつもりょーちんが私の話題を出すから彼女だと勘違いをしていたらしい。私は慌てて否定をした。だって同じバスケ部には彩子ちゃんがいるのに、もしそんな勘違いが広がったらりょーちんの恋に支障が出てしまう。
「まじかーてっきり俺はみのり、……あーもうみのりって呼んでいい?あいつがそう呼ぶから俺も勝手にそう頭にインプットされてるわ」
「あ、はい全然お好きにどうぞ」
「さんきゅ、あいつと付き合ってると思ってたぜ」
「本当に違うので!」
「わかったわかった、じゃあ途中まで一緒に帰らねえ?」
「えっもう部活終わったんですか?」
「俺今日は軽くやって病院なんだよ。昔膝やっちまってさ」
「そうなんですね…じゃあ途中まで」
「おう、あ、宮城!みのりのこと借りるわ!」
振り向くと体育館の入り口にりょーちんがいて、こちらを驚いた表情で見ていた。
「は?え、なんで」
「いやそこで会ってよぉ」
「……だからって三井さんが一緒に帰ることないでしょ」
「あ?何で怒ってんだよ」
「別に怒ってない」
「怒ってるよなぁ?」
「いや、えと…」
「てかこんな時間まで何してんだよ」
「……補講、あって」
「……それっていつまで?」
「え、……今週までだけど」
「じゃあ明日は俺が部活の後送ってくから待ってろよ」
「え、いやいいよ!だってまだ微妙に明るいし、昨日もこの時間に帰ったし」
「いいから!じゃあ今日のところは三井さんに譲るから」
「おう」
「ハー腹立つあんたの顔。さっさと行けば」
「お前先輩に向かって!ハーじゃあ行こうぜみのり」
「つーか馴れ馴れしくね?なんで名前呼び」
「あー宮城うぜーなー」
「おい!」
三井先輩は私の腕を引っ張ってると更にりょーちんの怒った声を後ろに校門を出た。ようやく腕が解放されたと思ったらクスクスと笑い声が聞こえてきた。
「見たか?あいつの顔」
「……なんか怒ってましたね」
「だよなぁ、ウケるわ」
「三井さん、りょーちんのこと嫌いなんですか?」
「あ?嫌いじゃねえよ。俺はあいつに情けもあるしな」
「情け?」
「まあ、いろいろあってな」
深くは私もそれ以上聞かずバスケ部でのことを聞いたら三井さんは楽しそうに話してくれた。三井さんは結構お喋りな人で、豪快に笑う人で、背が高くて、少しソーちゃんに似ているような気がした。
それじゃ、と十字路で別れ家に帰るとその夜めずらしくりょーちんから電話がかかってきた。内容は三井さんと何かなかったか、とか変なこと言われてないか、とか。なんか必死すぎて面白くてどうでしょう〜と試すようなことを言ったりして笑っているところを親に見られて電話を切った後好きな人?と聞かれた問いには答えず直ぐに部屋に戻った。