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翌日。

帰りのホームルームが終わったらりょーちんにじゃ、後で。と言われて頷く。私は補講のある教室に移動して18:30までみっちり勉強をした後どう時間を潰そうかとうろうろした挙句、体育館の側にあった水道の近くに体育座りをして待つことにした。

練習は19:30までと言っていたからあと1時間。私は本を取り出して僅かな体育館から漏れる光を頼りに文字を追う。するといきなり体育館の扉が開きあちいいい!と赤のリーゼントというあまりにも派手な男の子が恐らく私の姿に気が付かず勢いよく水を発射した。


「きゃっ、」
「くぅぅ、……む?」
「あっ」
「お、オンナノコ!!!あ!す、すまん!濡らしたか!」
「あ、ひえ、あの」
「すまない!俺の着替えを持ってくるのでそちらにぜひ」
「い、いえ大丈夫です」
「いやいや濡れて……ハッ」
「……?」


突然リーゼントくんが真っ赤な顔をしてわなわなと胸の方を指差して私はそのまま視線を落とすと濡れてしまった拍子でシャツが透けてしまって下着が丸見えだった。私は思わず前を隠すように両手で胸元を隠してしゃがみ込んだ。恥ずかしすぎる、男の子にこんな、下着を見られてしまうなんて初めてだった。


「あ、あ、あ、わごめ、ゴメンナサイ!!これは、そう、事故!事故です!!」
「は、はい、あの私もすみません、」
「いやいやいやいや!」
「オーイ花道ィ?なーに騒いで……ってみのり!?おいお前どうし」
「りょ、りょーちん!この子の知り合いか!?」
「知り合い知り合い、つーかどうした?腹痛えの?」
「ちが、うんだけど」
「こ、これには深いわけが!!」
「深いわけぇ?」
「あっ、ちがう!あの、水がシャツに掛かっちゃって、その……透けちゃっ、て、」
「っ……桜木ィ!!」
「わざとじゃない!わざとじゃない!!」
「ちょっと待ってな」


そう言ってりょーちんは自分のスポーツタオルを頭に被せてどこかに行ってしまった。ドキドキと心拍数が上がる。こんなことになるなら大人しく教室で待ってればよかった、そんな風に思っているとふわりと肩に布が被さる。上を見上げればりょーちんがジャージを持ってきてくれたようで無理やり立ち上がらせるとジャージのチャックをグッと上まで上げた。


「ん、これで大丈夫」
「あ、ありがと」
「びしょ濡れって感じでもないんだろ?」
「うん、ちょっと掛かっちゃっただけだから乾くと思う!」
「ならそれまで着とけ」
「うんっ」
「はーなーみーちー、お前周りをよく見て水道行けって」
「ち、ちがう!花道くんは悪くないよ!私がここにいたから気が付かなかっただけだよ!」
「そ、そーだそーだ!」
「なんでそんなとこいんだよ」
「……だって、どこでりょーちんのこと待ってればいいかわかんなかったんだもん」
「体育館いればいいだろ」
「………いいの?」
「俺昔からみのりの我儘ばっか聞いてきたし今更ダメだって言うはずないだろ」
「そ、そんなことないし!」
「へえ〜じゃあもうホラー映画観た後も1人でトイレ行けんだな?ケーキの最後のいちご俺が食ってもいいんだな?」
「いっいじわる!」
「わはは!2人とも仲良いんだな!」
「「うるさい!」」


私はりょーちんにいいから待つなら体育館な、と腕を引かれて後ろを歩く。重い扉を開かれると懐かしい体育館のキュッキュッというバッシュ音とダムダム、ボールの音。それだけで少し涙が流れそうになった。


「あ、みのりじゃん」
「相変わらず馴れ馴れしいな〜」
「いいだろうが」
「まあいいけど」
「みのり?」
「あ、彩子ちゃん、ごめんねちょっと帰りにりょーちんと予定があって、深い意味で一緒にいるんじゃないの!」
「?そう、こっちおいで?寧ろ暇なら手伝ってもらえる?」
「もちろんっ、あ、このジャージも私がちょっとミスっちゃってYシャツ濡れちゃってたまたまりょーちんが借りてくれただけで深い意味ないからね!」
「?分かったわよ、何よさっきから必死に」
「勘違い、されたくないから…お手伝い!何すればいいかな?」


私は急いで話題を変えてバスケ部のお手伝いに励んだ。そんな私をりょーちんが見ていたことは私は知らなかった。