5 sideB
中学時代、好きな女がいた。
そいつとは同じクラスになったことが無かった。地味で、どんくさくて、物静かな落ちこぼれ。そういう印象のやつ。だけど1年のころからあいつはずっと放課後図書室でひっそりと本を読んでいた。その姿を見ると他のやつには無い感情が生まれていた。活字を見るあの目が俺に向いたらどうなるんだろう、ページをめくる手はどんな感触何だろう。そんなことばかり考えてた俺はこれが恋なんだと、認めたくもねえが自覚した。
でも当時、プライド的にも自ら話しかけることも出来なかった俺は虚しくも見ているだけの恋愛に終わった。紛れもなくそれが俺の初恋だった。
あれから6年、再会は偶然にも自分の家の近くで起こった。傘もさしてない、膝が赤く血も流れている女の姿は、忘れもしないその初恋の相手、辻川の姿だった。一体どうしたというのか、訳も分からなかったが頭で考えるより先に行動が先走った。やつは心底傷心しきった様子で俺を瞳に映した。
有無を言わさず家に連れ込み、風呂に入るよう促したがタオルと着替えを置くのに脱衣所に入るとき柄にもなく緊張した。雨に濡れてぐしゃぐしゃだったが、あの頃より伸びた髪も悲愴に満ちた表情もどことなく大人と子供の狭間のような顔つき。自分のあの頃の気持ちが蘇るのにそう時間は掛からなかった。
風呂から上がってきたやつは自分のスエットをだぼつかせながら身に着けていた。その中でも右足だけはたくし上げ、細くて白い足が晒されていた。久しく女のそういう姿を見たことが無かったから妙な緊張感の中怪我の治療のために救急箱から出した消毒液とコットンを片手にやつを目の前に立たせる。おどおどとしながら目の前にきた折れそうな足に容赦なく振りかけるとひゃあ、と声を漏らし座り込んだ。正直自分のモノが勃たねえか心配になった。
今ここには俺とこいつだけ、いくらでもそういうことは出来てしまう。でも消毒液一つで涙目になってるこいつに酷いことはさすがに出来ねえ。さっさと治療を終わらせ家に送り届けようと家のありかを聞くと家が無いと言いやがった。こいつどうやってここまで生きてきやがったんだ。
携帯も壊れ、家もない。実家の方でのうのうと生きてると思っていたやつが目の前にいる、こんなチャンスもうない。俺は強引に家にいるよう伝え、その日はソファで寝るよう言った。
翌朝、寝てる姿を見て何故かほっと安心する。それから少しの時間その寝顔を眺めて家を出る支度をする。まだ起きる様子のないやつに声を掛け鍵を託すともの言いたげに後を追おうとしてきたがリビングでずとんと音がしたので恐らくこけたんだろう。本当にどんくせえやつ。
事務所に出勤するや否や、センパイにあたるヒーローに機嫌いいなと言われそんな顔に出てたか否定しつつも口元を隠した。今日は絶対早くやり殺して家に帰る。
どうせ住むところもないんじゃ家でだらだらしてんだろ、と思い帰宅してみると電気もついておらずシンとした室内に人の気配はない。おまけにあいつの荷物は全て空っぽ、どうやら出て行ったようだ。チッ、と舌打ちが出る、でも1日やそこらでどうにかなるわけでもねえ、どうせここに戻ってくると踏んで2人分の飯を作り、先にそれを平らげる。テレビもつけず若干イラつきながら携帯を見ているとガチャと扉の開く音がした。検討通り、自分がにやりと笑ってしまう感覚を覚えたが顔を横に振り真顔に戻る。しかしなかなかリビングに入ってこないあいつにまたイライラし始めた俺は声を掛けると小さな声でおじゃまします、と聞こえた。
どこに行ったか聞いてみると携帯ショップに行ってたようで、住民票も浮き彫りになってることを知ってあほだなと思うのと同時にもうこのまま押し切ってしまえという気持ちになる。でもその前にこいつに餌付けしないとだめだ。作った親子丼を出せばきょとんと効果音が鳴りそうなくらいに俺を見つめ食べろと言えばおいしい、と呟きながら食べた。当たり前だ、と思いながらその姿を見てるとぎょっとするくらい目の前のこいつは涙を流し始めた。聞けばあたたかくておいしくてつらくて泣けたらしい。女ってのはよくわかんねえ。
食べ終わったらすぐに風呂に入らせて、出てきてから一緒にここで住むことを提案すれば計算違いのことを言い出すこいつにマジで切れそうになる。
「ぁ、っ……え、と…見ず知らずの一般人に、ヒーローってここまで、してくれるんですか……?」
アホかこいつ。俺はてめえだから家に家まで連れてきて、てめえだから鍵渡して、てめえだからここまで言ってんだろうが。つーかここまでしても自分に気があるかもとか思わねえのかよクソ。
「少しの間、お世話になってもいいでしょうか……?」
だけどその一言でこのイライラも消えるっつーか、これが惚れた弱みか。
だから次のその言葉を聞くまでは普通に、ゆっくり落とすつもりでいた。
「なんでも、します。爆豪くん、わたしなんでもするので、」
なんでもします?こいつ男にそういうこと言って何も起きないとでも思ってんのか?
ああ、そうか。こいつは俺は何もしないと高がくくっていやがるんだな。
「………じゃあてめえ、俺が抱かせろっつったら抱かれんのかよ」
そういったら少しだけこいつの瞳が揺れて、顔をカッと赤くさせた姿見てなんか自分の中で何かプツンっていって気が付いたらベッドに押し倒してた。
ずっと好きだった辻川みのりの身体あばいて、興奮した。隅々まで見て触って、俺の舌で甘い声上げて恥じらうこいつはこれまでこういうことを色んな男と寝てきたんだろうか。じゃねえとこんな簡単に男に股開くはずはずねえ。
イライラする、ゆっくりやってやることが出来ない。ガンガンに突いて、乱れる姿を脳裏に焼き付ける。背中に爪を立てられて少しピリッとして、ああこれは夢じゃねえ、そんなことを腰を振りながら考えてた。
それが半年前、こいつとの最初のきっかけ。