10 sideB
「久しぶりだなあ爆豪!今回も大手柄じゃねえっか!」
「っせーわ、」
「相変わらずだなあお前!みんな元気か?」
「知らね、テメエの方が連絡取ってんじゃねえの」
「まあそうなんだけどさ。実際会ってないし、爆豪誰かと会ってねえの?」
「会ってねえわ」
関西で大きな案件を終え、同じ現場にいた切島はこっちに本拠地を置いているファット事務所のサイドキックとして活動していた為今回は久しぶりの共戦となった。その流れで飲みに行こうぜという流れになって2人で個室の居酒屋にいるわけだが何だかんだ自分と対等でいる高校のやつらといるのは楽だった。
「でも2ヶ月前に上鳴も活躍してたよな〜!あの東電システムが死んだときのやつ!」
「……ああ、なんかやってたな」
「緑谷はフリーで動いてるからかこっちにもよく来るんだよ!あいつもタフだよなあ!」
「チッ、デクの野郎、フリーだから案件多く持っていきやがって目立っとんなや」
「ははっ轟も来年独立宣言してたの驚いたぜ?早いよなあ!さすがというかなんというか……」
「ハッ、あいつ一人で事務所回せるわけねえわ」
「確かに心配になるよなあ。あ、でも一人じゃ無くね?」
「あ?」
「や・お・よ・ろ・ず!あいつら付き合ってるらしくて八百万がサイドキックに入るらしいぜ?」
「……ポニーテールか、チッ、」
自分から同級生のやつらの情報をわざわざ知ろうともしねえから切島から聞く話はほとんどが初めて聞くようなことばかりだ。こいつも対外1Aのこと好きだよなと思わず笑いそうになるのを堪えながら酒を飲み進める。
「つーか爆豪もすげえよな!つい最近東京の敵連合の一つ潰してなかったか?」
「あんなん相手にもならんわ」
「いやまじすげえよ!こっちのヒーローたちもみんな爆豪の活躍はすげえっつってるんだぜ?」
「……そーかよ」
高校のころはこいつのこういう真っすぐなところが苦手だった。
だけど大人になってこいつのしてることは俺にとって簡単ではないことを知ったし、正直羨ましいとも思う。俺にもこれくらい気持ちをストレートに言えれば…、
「爆豪?ばくごー??おーい!」
「…あ?」
「もう酔ったか?」
「酔ってねーわ!」
「おう、ぼーっとしてたぜ?疲れた?」
「疲れてねー!」
「ならよかった!あ、すみません生2つ追加でー!!」
ニコニコと愛想よくいれれば、……もう少しあいつと上手く出来ていたんだろうか。
「……爆豪、なんか悩みでもあるのか?俺でよければ聞くぜ?」
「・・・・・・・・」
「あーでも余計なお世話だよな!すまん!」
「……好きな、やつが…、」
「え?」
「……好きなやつ、がいんだ」
「ええええ!まじで?つーか爆豪からそういう話してくれるの初めてじゃねえ?」
「……っせーわ」
「で?その子とどうなったんだよ?」
「……一緒に住んでる」
「……え?あ、じゃあもう付き合ってんのか!」
付き合ってる、なんてこと今の俺たちから1番遠いことだな。
追加で来たビールを口に含みながら付き合ってねえ、と答えると切島は頭をひねらせた。
「じゃあ好きなやつと付き合ってないけど一緒に住んでるってこと?」
「ああ」
「え〜?!どういう状況だよそれ!」
「……どうすりゃ、あいつのこと、手に入んだ」
「…爆豪…、」
「……あーいまの聞かなかったことにしろ」
「ちゃんと気持ち伝えたか?好きだって言ったのか?」
「・・・・・・」
「爆豪は言葉が足らねえからさ、心配してくれたり気にかけてくれたり喜んでくれたり、普通の人じゃわかんねえからちゃんと言葉にした方がいいぜ?」
切島のその言葉に反論が出来ずに俺はうっせ、と小さく言ってトイレへと席を立った。
多分東京に帰ったところであいつはもう家にいない。仕事も見つかって家も借りられることになっただろう。そうしたあいつにうちにいるメリットなんてねえんだ。
朝起きて朝ご飯があること、家を出るときにいってらっしゃいがあること、家に帰るとおかえりなさいがあること、当たり前に風呂が準備されてること、夜ご飯があること、部屋がきれいなこと、あいつがいること。全部俺にとっては特別なことだったのに、何一つあいつに伝えてこなかった。
「……また、失う」
また失うんか、俺は。