11


生大爆殺神ダイナマイトの個性発動を見たわたしは終始ハイテンションだったわけですがいざダイナマイト家に着くと借りてきた猫のように動けなくなる。寝落ちしたこの間とは全然状況が違うのだ。

「おい、上着」
「あっ…は、はい……」
「肉くせーからファブらせろ」
「ファ!……大爆殺神ダイナマイト、ファブリーズをご存知で……?」
「てめえは本当に俺のこと舐めてるよな」
「な、舐めてません!!敬愛しております!!」
「あとここは自宅だ、名前」
「……爆豪さん」
「ん。風呂入ってくる」
「えっ!?あ、え!?」
「適当にソファ座ってろ。冷蔵庫の中の飲み物とか勝手に出していい、テレビのリモコンはそこ、暖房はそのうち着くけど寒かったら床暖だから寝っ転がってろや」
「……ねっころ、がって、ます」
「……ぶっ、くっ…くく、勝手にしてろや」

大爆殺神ダイナマイト、笑ってた……。
ああいう笑った顔、初めて見た気がする……え、やばいパニックすぎてどうしよう私はこのまま一生床に寝っ転がって生きていこう。わたしの頭の中にインプットされた大爆…爆豪さんの笑顔。

「くうううう、」

なんという、なんという!言葉に出来ない胸の高鳴りと比例するように私は本当に寝っ転がって足をバタバタとさせた。あ〜〜ファンの皆さんごめんなさい、私だけが堪能してしまいましたお許しください……あ、いやでもこれは大爆殺神ダイナマイトではなくて爆豪さんだからいいのか?いや、きっといいんだよね……罪悪感なんて抱かないぞ……!
ふわふわ、ドキドキ、ざわざわ……擬音では簡単に表せるのになあと身体を縮こませると初めての床暖は本当に温かくて、思えば今日は金曜日で1週間の仕事の疲れがピークに溜まっていた。うとうととしてしまう自分の睡魔と戦いながら爆豪さんが出てくるのをじっと待った。







「おい、」
「!は、はい!寝てません!」
「……分かりやすい嘘ついてんじゃねえわ」
「……んぬぅ、」
「風呂、入れ。着替えは洗面台にある」
「……いや!?あのわたし、お茶したら帰りますけど!?」
「あ?帰すと思ってんのか?」
「か、帰らせていただきますぅぅぅっ」

もしかして今日、わたし爆豪さんとそういうことをする為にここに呼ばれた……?まって、まてまてまて。いや、大爆殺神ダイナマイトは大好き。叶わないからこそ抱かれたいとか言ってた時もあったけど実際にその場面に直面するとまた話は別だ。というか出会って間もない女の人を抱く大爆殺神ダイナマイトとか……

「解釈違い……」
「あ?」
「あっいや、」
「何が解釈違いだって?言ってみろ」
「………………」
「どうせテメェのことだ、見当違いな解釈考えてんだろはよ言えや」
「………………」

言ったら怒られるかもしれない。けどこのまま抱かれる雰囲気になるよりは……、

「大爆殺神ダイナマイトは言動こそ荒いですが堅実なヒーローです。……ただ勝って助ける、そこへのこだわりが強くて…だからこそ市民は大爆殺神ダイナマイトが来た、負けない、勝てる、助かるって思うんです。……だから、そんな…出会って間もない女を抱くような、軽い男じゃない……」
「………………」
「……わたしの信じてきたヒーロー、なんです……」
「………………」
「…………ごめんなさい、家では爆豪さんって分かってるんですけど…わたし、結構長いこと大爆殺神ダイナマイトのこと追ってきて、ファンで…だから……自分の中の大爆殺神ダイナマイトを、塗り替えたくない…です、」

やっぱりわたしは爆豪さんと出会うべきではなかったんだ。だって爆豪さんがやり得ること全てが違和感を生じてしまう。私の中の大爆殺神ダイナマイトが崩れていくのが嫌なんだ。

「…………あの、帰ります…、その、焼肉ご馳走様でしたっ、本当に美味しかったです。あと、これからも応援してま」
「自分勝手だな」
「……え?」
「何が俺の解釈違いだ、テメェの勝手なイメージに俺を幻滅させてんな」
「………………」
「俺は大爆殺神ダイナマイトな前に1人の人間なんだよ。爆豪勝己っつー名前がある、テメェらと同じだ。マスクを被ってない時に俺はテメェと会ってる、だからテメェの大爆殺神ダイナマイト像なんか知ったこっちゃねえ。つーかヒーローは常に堅実に人を助けることだけ考えてなきゃいけねえんか?休みの時間に気に入った女見つけて飯食っちゃいけねえんか?」
「………………」
「俺のこと知ろうとしねえのはテメェの方だろ。勝手な解釈だけ無駄に作り上げやがって」
「………………」

本当、だ。
爆豪さんの言われた通りだった。私は大爆殺神ダイナマイトのことばかりで爆豪さんを一切見ようとしてなかった。それってとても失礼な話で、絶対いい気がしない。こう言われるのも当たり前だ。爆豪さんに視線を向けると眉間に皺を寄せてるわりには覇気にかける寧ろ少し傷付いてるようにも見えた。こんな顔、大爆殺神ダイナマイトはしない。

そうだ、こんな顔しない……そんな場面がまだたった2回しか会ってないのに何度あった?

「……ごめんなさい、わたし無神経でした。わたし…爆豪さんのこと、何も見てなかった」
「………………」
「……教えてくれますか?」
「……ハッ、じゃあ手始めにこれだけは教えてやる。俺は手に入れたいと思ったものは絶対手に入れる、それが目の前にあるのにお預けなんかしねえ」
「ヒッ」
「だから俺に抱かれる為にちゃんと風呂入ってこいや」

こんなの逃れられるわけがない。