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「美味しかったね〜!」
「シェフ笑ってたの気が付いてたか?」
「えっ!?わたしのこと!?」
「ガキみてえに騒ぐからだろ」
「え〜!!でも美味しかったから…仕方ない……あ、爆豪くんの作るご飯もすっごく美味しいよ?私ももう少し頑張らないとな〜」

ホテルのレストランから戻ると入ってきた景色とは一変してムードのある夜景が広がった部屋に少し緊張を覚える。綺麗だけど、夜なんだなぁって思った。

「風呂、」
「へ!?」
「んなびびんな。風呂、広いから一緒に入るか」
「えっ!?む、むり!それはむり!」
「ああ!?なんでだよ!」
「い、いろいろ準備とかもあるし!!」
「んなもん昨日からしてんだろお前」
「な!も、もしかしてうちに監視ビデオでも設定して……!?」
「ちげーわ!てめぇの性格考えりゃわかんだろ!」
「そ、そっかぁ…じゃあわたしが今緊張して死にそうで気持ちを落ち着かせる為に1人でお風呂に入りたいということも考慮してくれませんかね……」
「…………チッ、先入ってくる」

そう、そうそう。爆豪くんは案外優しいってこともわたしは知ってるので強要しないって分かってたよ。ああ、優しい恋人に感謝…とその後ろ姿に両手を合わせ拝んで私は慌てて旅行バックを探る。

「よし、ある……」

両手には淡いオレンジ色の下着のセット。この日の為に新調したものだ。まさかえっちの為に下着を用意するなんて…そんなこと経験ないし今心臓取れちゃうんじゃないかってくらい心臓が煩い。
今日は気絶しないように…と前日までに何回も記憶の片隅にあるあの魅惑の上半身を思い出していた。あの身体に抱かれる、その想像もちゃんとした。

「うわ〜〜〜っ」

 ただのヒーローオタクだったわたしが、推しのヒーローと夜を共にすることになったこの世界……夢であるなら覚めたくないし、このふわふわする気持ちをずっと感じていたい。だけどこれはきっと、現実だ。腕をつねりすぎて跡ができて少し痛いもん。

「はぁぁ………………」
「おい」
「!は、え!?な、なんで上!」
「慣れてもらわねえとまたぶっ倒れんだろうが」
「か、風邪引いちゃうよ!ヒッち、ちかい!近いですっ!や、まって!」
「……ふっ、いいから風呂入ってこい」

上裸の爆豪くんはぽんとわたしの頭を撫でてベッドルームの方へと行ってしまった。いや、いやいやいや!なんか数ヶ月前のデジャブのようですけど!なに!?あのふって笑う顔!えー!あとなんかまた数ヶ月前より身体逞しく見えたのはわたしのフィルターのせい!?えーどうしよう……しかも爆豪くん、お風呂入った後というのもあるけど本当に彼独特のいい匂いがするんだよなぁ。詳しくは知らないけど個性が関係あるとかで、見た目の印象とは真逆の甘い匂いが私の脳内を刺激する。どうしよう…わたし、大丈夫ですか?
何とか歩き出して浴室へと移動すると自宅の2倍の広さはある空間にテンションは修学旅行のテンションに戻ってきた。というか考えてなかったけどここいくらくらいするんだろう……。

「考えるのやめよ……、」

わたしは丁寧に身体を洗っていつもより早くお風呂を出た。緊張はしてるし私なんかがって気持ちでいっぱいだけど、爆豪くんのまた新しい顔が見れるかもしれないと思うと浮きだつ気持ちが止まらなかった。











「おまたせ、しましたっ」
「おー」
「……そっち、行ってもいい?」
「はよ来いや」

爆豪くんが待つベッドの上に登り隣に座る。高いベッドだ、ギシと音も立てない。煩く鳴っているのはわたしの心臓の音だけ。

「あの、わたし、爆豪くんを満足してあげられるか分からないんだけどっ!ていうかだいぶご無沙汰だから優しくさてほしいなぁ、なんて思ってたり……あ、でも爆豪くんがしたいことなるべく出来たらいいなって思ってるんだけどね!絶対歴代の彼女と比べたらポンコツだから最初に謝っておきますごめんなさい」
「……ほんとよく喋るよなテメェわ」
「えっあ、そ、そーかな!?オタクだからかな!?ほら、オタクって興奮すると早口になるって言うじゃない?あ、興奮ってそういう意味で興奮してるんじゃなくて!なんか、あの、そう!緊張してるからつい早口になっちゃうんだと思う!爆豪くんは、っん、!?」
「もう余計なこと喋んな」

喋るも何も、と言葉に出来なかったのはもう一度爆豪くんに言葉を遮るようにキスをされてしまったから。爆豪くんは早急だ、いつだって流れをつくるのが早い。わたしはキスをされるまま彼に身を任せてそのまま押し倒されると視界いっぱいに広がる彼の綺麗な顔に少し泣きそうになってしまった。