心陽について

「昔も今もこれからも、「間違い」がないように。
正しく生きれば、神様は見ていてくれる」

両親が虐待の罪で捕まってから、三兄弟はバラバラに。
心陽は母方の祖父母に預けられた。

祖父母はとてもとても優しくて、心陽はすぐに心を開いた。

小学生の、いつの頃か。祖父母からこんなお話を聞く。

「いい事をすれば、神様は見ていてくれる。
さらに、
正しくあれたなら、みんなが信頼してくれる。そして、
人をいっぱい助ければ、自然と願いは叶う」

優しい人は、みんなそうだと。

「おばあちゃんも、優しいからお願いはかなったの?」
「かなったよ。
大切な孫と一緒に暮らせているのだから」

その日から、心陽の生き方は定まった。
「いい事をして、神様に私のことを知ってもらおう。
(心陽は一般的に悪いとされていることを
一切しない。
当たり前のことから、
「人が関心」することまで。
全て行った)

常に正しく生きて、誰からも信頼されるようになろう。
(心陽は、その時から、「正しい人間」の形を作った。
礼儀正しく、誰に対しても大切に接する。
「常に敬語で、しっかりしたあのこ。
すごく優しいんだけれど
なんだか、私たちとは違うみたい」)

沢山沢山、人を助けて、
私も願いを叶えたい
(誰の願いも叶えた。
叶えられないものもあったけれど、
頼まれたことは、なるべく断らないようにした。

いつしか、他の人からすれば、
彼女はタダの「聖女」のような存在となっていた)」

心陽の願いは、
もう一度、兄妹3人で暮らすこと。
それだけを願って、
ただただ、「正しく」あり続けた。


その生活は、中学、高校、大学とずっと続いた。

彼女の願いがかなったのは、大学の生活にも慣れた頃だった。
奇跡的に、同じ町に集まった3兄妹。
「兄も、双子の妹も、最初はよそよそしがったけれど
でも、今は、ちゃんと、家族として居られてる。
私のしてきたことは間違ってなかった」

彼女のねがいはかなったけれど、彼女は正しくあることを辞めない。

「過ごしていて分かったんです。
良い事をすれば、誰かのためになる。
正しくあれば、誰かを導くことが出来る。
困っている人を助けたならば、私と同じで、願いが叶っているということかもしれない。

私は、人生で1番叶えたいことを実現させたのですから、
その分、誰かの力になれたらいいなと思います」

彼女は人に「正しさ」を押し付けるのではなくて、
自分が「正しく」あるべきだと思っている。
最初は叶えたい願いのためだったのに
今では、「彼女」の人格のひとつとなったしまった。

それでも彼女は幸せでいる。
だから、彼女にとっては、この答えは
「正しい」ものだと思っている。

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