個性
家に帰ってから、母にもう一つの個性が出たという事を話してからは大変だった。
いくら調べたところで、どちらの家系にも「艦娘」の個性を持った人なんているわけもない。翌日に病院に行って診てもらったところ、「突然変異の個性」と結論づけられ。
同じような個性を持った人も今のところ見た事は無いと言われ、それはそうだろうと思ったものの希少種だなんだと何やら興奮気味に医者に言われ少し怖かった。
両親にヒーローになりたいと言った時には大層喜んで、「海咲のその個性なら絶対なれる!」と言ってもらえて、また戦えるんだと少しワクワクしてしまったのは秘密だ。
別段戦うことが好きという訳では無いが、それしかやってこなかったため他に自分が何が出来るかなんてわからないのだ。今更やめることなんてできないし他にやれることを探すというのも何か違う気がしてしまう。自分には戦闘こそが一番合っているのだと、やはり思うんだ。装備によっては、使える場所は限られてしまうだろうけれど。
兎にも角にも、装備が扱えなければ話にならない。
今のところ重巡洋艦としての装備しか扱えないようだけれど、それにしたって連装砲や機銃は重くてまともに持つことすら出来ないし、脚に付けている魚雷だって、脚がちぎれそうな程だ。
体に合わせたサイズになってくれている事はありがたいが重さは可愛げがない。
「それにしたって、こんなにおもいものだったかしら…」
ぐっと力を入れてなんとか機銃をひとつ持ち上げてみる。
駆逐艦の小さい子たちだって、体に合わせた大きさの装備を軽々と持ち上げていたというのだから、体の大きさは関係無いだろう…と思う。
トレーニングはもちろん必要だろうけど、それでも重すぎる。
「(―――もしかして、人≠ニして生まれたから…?)」
艦娘と人にどれほどの差があるのかとも思うが、大きな怪我を負っても入渠ドックという名の温泉に入ればすっかり治ってしまうし、多少のトレーニングはしているとはいえ重い装備を体中に付けていても軽々と歩けていた。戦艦の先輩方だってそうだ。
だって装備は、私たち艦娘の身体の一部だから。
そう思った時、今まで重く感じていた装備がふと軽くなったような気がした。
「…あれ?ふつうに持てるようになってる…」
何もしていない装備がつい先程までと違い軽々と持てるようになった。何かした?他にも個性が?いいや、そんなはずは無い。
そこまで考えた時にまた装備がぐっと重く感じてきた。そこで気付く。自分の思考。
医者や両親に散々珍しい個性≠セなんだと言われたことによって無意識に「これは鞍馬海咲という一人の人間の個性である」と考えてしまっていた。さてどう扱おうかと。身体の一部なのに。
どのようにして手を足を動かすのかと考えているのと同じだ。そんなこと考えなくても動かそうという自分の意思さえあれば考えずとも動かすことは出来る。
私は、生まれ変わったところで性質は何も変わらない、艦娘なのだ。
軽くなった機銃を腕につける。連装砲も持ち上げてみたところ、もう重くなんかなかった。
偵察機を飛ばすための滑走路も片腕に付ける。
「あ、ぎょらいもおもくない…」
両脚につけた三連装魚雷も、普通に歩けるほどに軽く感じる。
小さい身体が随分と厳つい装備に包まれた。ひどく懐かしい気持ちになる。
装備を持つことができるようになったとはいえ、トレーニングは必要だろう。水の個性も特訓して今より扱えるようにならなければならない。
「あ、そういえばねんりょうやだんやくのほじゅうは…」
くぅ、と切なげになくお腹で全てを察した。お腹に手を当てて苦笑する。
これからは沢山ご飯を食べなければ。戦闘中に切らしてしまわないように、なにか食べ物を持ち歩くようにした方がいいかもしれない。トレーニングメニューも考えないと。
期待に胸を踊らせながら、「作戦完了」と言って装備を解いて母の元へと走った。
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よい子の箱庭