実技
プレゼント・マイクの説明を聞いた後、私たちはそれぞれの実技試験会場に移動した。
そこはまるで本物の市街地のようで。あまりの広さにみんな口をぽかんと開けて驚いていた。
こんなに広いとどこにその仮想ヴィランがいるのかとか分からないんじゃないだろうか…。そもそも大きさ自体わからないが、それほど小さなものでもないだろう。まずは重巡装備で索敵機を飛ばして…と考えていると、「ハイスタートー!」という声が聞こえた。
「どうしたあ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!!
賽は投げられてんぞ!!?」
『(それもそうだ、実戦じゃカウントなんてない…)
重巡洋艦伊吹、出撃します!』
一斉に走り出す受験生たち。慣れた重さを感じながら、足下に水を集中させ、その上を走る。
まずは索敵、と思い索敵機を手にしようとしたところで建物を突き破ってロボットが出てきた。それも、多数。
これだけの大きさで、次々と出てくるのなら、索敵は必要なさそうだ。
『さぁ、止めを刺しちゃいなさいなっ!』
ドォンと派手な音を立てて砲撃戦を始める。1ポイントの仮想ヴィランは一撃で壊れた。
続いて近くにいた仮想ヴィランたちにも照準を合わせる。
久し振りに装備を扱うこの感覚に、思わずため息がこぼれた。まるでこの時を待ち望んでいたかのように。
『(3ポイント…!!)
5連装酸素魚雷、行っちゃって!!』
仮想ヴィランの足下にまで水をおくり、魚雷を発射させる。
とにかく今の自分の装備をフルで扱いたかった。ロボット相手なので手加減する必要が無いというのがありがたい。本物のヴィランは人間だから、火力なんかは注意しなければならないだろうし。それに周りにも気を配らなければならない。
今は周りにほとんどいないし、もう建物の破壊も気にしなくなっていた。
今何ポイントだっけ、それすら分からなくなるくらい、とにかく夢中だった。
と、そこに、今まで以上に派手な音を立てて、一番大きなロボット。
「0ポイントのお邪魔虫…?!」
『あらぁ、あんなに大きいの…。』
洒落にならん!と0ポイントヴィランから逃げる受験生たち。まさかあんなに大きいとは思わなかった。一体だけなのかと思っていたが、これじゃあ一体いても相当な害悪だ。
お邪魔虫。確かに邪魔だ。とても。
それなら。
『全砲門、よく狙って―――
てーーーーーっ!!!』
艤装が鈍い音を立てて狙いを定め砲撃を放つ。自分の最大火力で攻撃した。
ぐらっと傾きそのまま後ろに倒れていく仮想ヴィラン。
砂煙が立ち前が見えない。「終了~~~!!!!」という声が試験会場に響いた。
行動不能にすることは出来た。装甲も傷つけれている。しかし大破させることは出来なかった。今の自分の火力ではそれが出来なかったという事実が悔しい。
しかし昔のように装備を扱うことが出来たというのは良かった。
実戦の場に立つと体が思い出したようで、思うように立ち回ることが出来た。
ふ、と一つ息を吐いて歩きだそうとしたところで「あ、おい!」と声をかけられた。
振り向くと、黒髪の男の子がいた。片目の上に小さな傷がある。。
『…?私?』
「ああ!さっきは救けられたぜ、ありがとな!」
『…救け……た、かしら?』
「え…?!」
『ごめんなさい、もしあなたのこと、結果的に救けたことになっていたとしても、私自身は救けようとしてやった訳では無いから…。』
そもそも、人がいるということに気が付かなかったし。
ヒーローとしてはダメだろうけれど、目の前の強そうな敵を倒すという目的に夢中になっていて、周りが目に入らなかった。
彼はぽかんとしてしまったけれど、困ったように笑って。
「それでも俺は、救けられたから。
なぁ、名前なんていうんだ?」
『鞍馬海咲です。あなたは?』
「切島鋭児朗!お互い受かってると良いな。」
『ええ。今度は同じ制服を着て会いましょう。』
差し出された手を握る。硬くて大きな手のひらだった。
「自信満々だな、」なんてまた笑って言うから、私は『無いよりはマシでしょう?』と軽く笑みを浮かべて返した。
彼は受かっているだろうと何故か思えたし、自分自身満足いく結果に終わったので落ちている気なんてしなかった。
予想通り、その後来た合否通知にて映し出されたオールマイトには「合格」の言葉をもらい、春からは雄英高校のヒーロー科に通う事が決定した。
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よい子の箱庭