裸足で深海を行け_4.5
ポスンとベッドに沈まされて、見上げた先には七海さんの顔があった。遮る物なく見る機会の少ない瞳が、普段とはまた違った熱を帯びている。
思わず私は、信じられないものを見るような目を向けてしまった。表情から肯定とは違う雰囲気を読み取ったらしく、私を組み敷いている七海さんは焦れたように眉を動かす。
「何か?」
「いやあの、七海さんにもこういう欲求あったんです、ね……?」
「人をなんだと思っているんですか。……嫌ですか?」
「あ、いえ!嫌ではないです決して!でも……」
「はい」
しどろもどろの私を、七海さんは根気強く待ってくれた。しかし、言葉を組み立てている間もじっと見つめられて、バクバクと心臓がありえない速さを更新している。このまま爆発してしてもおかしくない。
そんな馬鹿馬鹿しい想像を隅に追いやって、私は言いかけていた内容を懸命にまとめ上げた。
「私、こういう経験はあんまりないので、何かおかしいところがあったり、おかしいことしたりしそうで、かなり不安、でして……。今の時点では取り合えず大丈夫でしょうか……?」
純粋な生娘というわけではないものの、経験は少ない。元々こういう欲が薄いこともあってか、行為にはいつもあまり乗り気にはなれないし、気持ち良くなれる自信もなければ、相手を気持ち良くしてあげられる自信もない。
果たしてこんな状態で大丈夫なのかと不安が渦巻いていた。相手が心底惚れ込んでいる七海さんということもあって、これが初めてと嘘をついてもたぶんバレないくらいにはガチガチに緊張している。いっそのこと初めてと言った方がまだ良かった気がする。でも、こちらを真っ直ぐ見つめ続けている七海さんに嘘を付くのは気が引ける。
終わりのない思考のメリーゴーランドをぐるぐる回していると、顔のすぐ横に置かれていた七海さんの手がスッと移動した。そして、どこにやれば良いのかも分からず困っていた私の手とその指を絡めた。自分以外の体温にビクリと身体を硬くすれば、七海さんは目尻を柔らかくした。
「私がアナタに幻滅することはありませんから安心してください」
「な、んで言い切れるんですか?」
「顔を真っ赤にしてカミングアウトしてるところがあまりにも可愛らしいので」
そう言われ、気付けばとびきり優しい口付けを受けていた。心臓はやはり、自己ベストを更新し続けている。