平和に行きましょう。
7月、嫌な気はしない。むしろ、(慶人視点)
7月、嫌な気はしない。むしろ、(慶人視点)
俺は割と有名な企業に務めてて。
データ打ち込みとかしてんだけど、今日はiPhoneがやたら鳴る。
でも、今日は仕事が山積みでSAN値チェックにも行けず昼を迎える。
昼は同僚と食べるし、あんまりLINEは見ない。
別にやましいことは無い……無いはず。
いや、まあ、ちょっと冬樹とのLINEがなんか距離感バグっててちょっと誤解招きそうで、怖い。
洵さんに言われたけど。
俺は冬樹が好きなのかもしれないけど、でも、俺はずっとノンケで生きてきたからすぐに「はい、俺はゲイです」なんて考えにはなれない。
まだ、同性同士なんて少数派だろ?兄さん。
昼飯のコンビニ弁当を食べ終えて喫煙所でLINEを開く。
TSUTAYAのお知らせと、LINEスタンプのと、冬樹からそれぞれ3通。
冬樹のトークを開くまでにドキリとした。
『……慶人さんの、声が聞きたい』
冬樹の枠、最新はそう書かれていた。
「……馬鹿じゃねーの」
ふざけんな。
こんな、不意打ち、ふざけんな。
…………嬉しい。
冬樹とのトークを開くと、他にも2件、『おはよう!慶人さん、今何してんの??』『もしかして、忙しい??』と入っていた。
「はは、俺は仕事だっつーの」
お前な。
こんなん勘違いするから辞めろよ。
声が聞きたいとか、ふざけんな。
お前の心は、兄さんのものなんだろ?
なあ、なんで、こんなにもムカムカすんだろ。
なあ、冬樹。
…………好きだよ。
俺は煙草を深く吸って冬樹にLINE通話をかける。
少しすると慌てた様子の冬樹が、『は、はい!』と出てくれた。
「悪い、仕事してて遅くなった」
『へ?仕事?』
これは完全に俺も休みだと思ってたな??
間抜けな可愛い声出しやがって。
『お前は夏休みかもしんないけど、俺は社会人なの。長期休暇なんか正月と盆しかねーわ』
「あ……」
そんなにも俺が恋しいのか?
ふざけんな。
お前は兄さん好きなんだろ??
なんで、俺の声なんか聞きたいんだよ。
俺は平静を装って煙草を吹かす。
そして、少し、いじわるする。
「どーした?なんで俺の声なんか聞きたかったの」
『……なんとなくだよ』
「そ?」
『うん』
なあ、好きって言ってよ、冬樹。
俺のことが好きだから声が聞きたいって、言えよ。
俺、俺さ、お前が好きだよ。
声だけでも愛おしさが溢れてくるんだ。
もう、ゲイでもいい。
お前が、好きだよ。
なあ、俺にしたらいいじゃん。
望みない恋なんか諦めて、俺にしろよ……。
『ご飯、食べた?』
「ああ。コンビニ弁当だけど」
『栄養偏るよ』
「…………じゃあ、料理教えろよ」
それくらい、許されるよな?
友達じゃ足りないけど、そばにいたい。
できるだけ、そばにいたい。
独占、したい。
『……いいよ』
「……今度の日曜日空いてる?」
『3日後?』
「うん」
冬樹はカレンダーでも見てるんだろうか、『うーん?あ、よし、』と小さく声を上げる。
『大丈夫』
「じゃあ、また詳しくはLINEするから。そろそろ昼の準備しなきゃだし切るわ」
『うん、また』
「またな」
ピロリンッと軽快な音が鳴って通話が終わる。
煙草を深く深く何回か吸って、火を灰皿にもみ消す。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙…………」
俺はその場にしゃがみこむ。
待てよ。
お家デートじゃん。
え、そういうスペース探した方がいい?
うっかり襲っちゃったりしない?
え、相手未成年だぞ!?犯罪じゃん!!
俺はそんな虚ろな状態で仕事したもんだからミスを連発してしまった。
帰ってから冬樹にLINEすると、『お疲れ様!!』『今日はいきなりキモイLINEしてごめん!!』とスタンプ付きで送られてきて、俺はつい『嬉しかったよ』と送ってしまい、爆発した。
ーつづくー
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