家からの道のりは親父の話を半分聞き流しながら空にある雲を見ながら歩いた。そいつについての事は何一つ教えてくれなかったから拗ねていたのもあったと思う。 気がつけば目的地に着いていて、慣れた足取りで進む親父の後に着いて行った。
ーーーコンコン 「火影様、奈良シカクです」
「シカクか、入るがよい」
「はい、失礼致します。」
扉を開けると、部屋にはすでに三人の人影があった。机を挟んだ向こう側に立つ火影様が俺たちに笑みを向け、それに向かい合うようにして大小二つの背。
「シカク、よく来てくれたのぅ」
「いえ、こちらこそ。この度はこのような機会を頂き感謝しております」
「うむ、こちらとしても助かっておるのじゃ。あまり畏るでない。ほう、其奴はシカマルだったかの。随分大きくなりおって。」
「ども。ーーーいでっ!!!」
「おいこらシカマル、火影様に向かって何だその返事は!!」
「ふぉっふぉっ、まあ良い、さして気にしてはおらぬ。」
「とんだご無礼を・・・申し訳ありません」
「して、前置きはこのあたりにして本題に移ろうかの」
大人達の挨拶を聞きながらも、俺の目は目の前にいる二つの背をずっと捉えていた。
「改めて。紹介しようーーー@@、前へ。」
「はい」
並んでいた背の小さい方の影が動き、三代目と共に机の前に並ぶ。 長い髪が揺れ、靡く。
「此奴が@@。お前達の新しい家族じゃ」
俺たちの前で俯きがちにあった顔をあげ、伏せていた目をそいつが上げていく途中、恐らく一番床から近い所にある俺の目線とそいつのそれがほんの一瞬だけ交わる。
それは漆黒に近い、でも染まりきらずほんの僅か藍色の瞳だった。 闇のようだと、思った。
その大きい瞳の中にある光が戸惑うことなく一直線に俺の目を捉えたものだから、一瞬のことにも関わらず俺は息をのんだ。瞳孔が無意識に開く。
全体的に華奢な体、ふわりと伸びる黒い髪。10歳の女の基準がどうだとか細かいことは良く分からなかったけど、大人びた印象はあったと思う。
そしてあの瞳が、特に印象深かった。何と言えば伝わるのか分からない。
でもとにかく、観入るような、吸い込まれそうな目だった。深い、漆黒に近い藍色。存在感のある、強い瞳。
睨まれているわけでは、決してない。
「シカクさん、ご無沙汰しております。改めて、本日からお世話になります」
「久しぶりだなあ@。元気そうで何よりだ。こちらこそ宜しくな!」
僅かに微笑みながら親父と会話をするそいつ。
透き通った声だった。
「こっちは息子のシカマル、まだ4歳のヤンチャな餓鬼んちょだが、仲良くしてやってくれな」
親父は俺の頭をバシバシ叩きながら言った。
「・・・ども」
ほれ挨拶と言われそう呟くとゲンコツが飛んできた、二回目だ。思わず涙目。
そんな俺たちのやりとりを見て、クスクスと笑うそいつをそこにいる奴ら全員が見惚れていたと思う。いや、全員かは知らんが少なくとも俺はそうだった。キレイだと、思った。
「シカマルくん、今日から宜しくお願いします。」
そしてまた、笑み。
「〜〜〜っ」
今度は顔に血液が集まるのが分かった。思わず下を向く。
「シカクさん、この袋に彼女の生活用品が纏めて入ってますんで、お願いします」
「おう、サンキューなゲンマ。いやしかし久しぶりだな。」
そいつの隣にいた高身長の男は細い棒を口に咥えながら会話をしていた、器用なやつ。
どうやらそいつの保護者のようで、今まで一緒に暮らしていたらしい。深く気に留めず、二人のやり取りを見ていた。 親父がその男の耳元で何かを囁いて、その男は少し引いた目で親父を睨み否定するように顔と手を振る。会話こそ聞こえないものの、親父がからかうような事を言ったのは明らかだった。
部屋に入った時よりも随分と柔らかくなった空気を感じながら視線を戻すと、パチリと目が合う。
どうやらそいつはずっと俺を見ていたようで、目が合った途端少しはにかんで掌だけで手を振って見せた。 少し驚きながら、同じように腕の位置は変えずに手だけを使って返した。
「んじゃ元気でやれよ、@。シカクさん達と仲良くな」
そう言いながら男はポンポンと優しい手つきでそいつの頭を叩き、ニヤリと笑う。
「はい。本当に今までお世話になりました。ゲンマさんも、どうかお元気で」
「おう、こっちのことは気にすんな、いつでも遊びに来いよ」
「はい、かぼちゃの煮付け、また作ってお裾分けします」
「ははは、そりゃあ楽しみだねえ」
「うむ。ゲンマよ、今まで@の保護ご苦労であった、感謝しておる。シカク、そしてシカマルよ。今後はお主らが@の家族じゃ。頼んだぞ」
「はい、お任せください火影様。そしてゲンマも、心配しないで子離れしろよ。此奴は俺が責任持って立派な大人に育てるからよ」
「子離れ・・・まあそんなとこっすかね確かに。宜しく頼みます、シカクさん」
「三代目様、そしてゲンマさん、本当にありがとうございました。改めて、シカクさんにシカマルくん、宜しくお願いします」
ペコリと頭を下げた彼女の挨拶を節目に、その場は解散となった。
She is...
(おいゲンマァ、まさかとは思うが保護の枠から超えた事はしてねえだろ うなあ?)
(はあ?!当たり前じゃないすかいきなり何言ってんすか)
(いやあ10歳とは言えどこの容姿だからよお)
(今すぐにでも今回の話取りやめましょうそうしましょう)
(ははは冗談だよゲンマ、まあ俺はともかくなあ)
(んあ?)
(あっちがな、ただの弟としていてくれりゃいんだがよ)
(はあ、そこは問題ないでしょう。まあ、”色んな意味で”ちゃんと見てい てやって下さいね)
(おう、任せとけ)
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全てを見透かされた気がした、あの一瞬
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