「そんなこと言わないで」

どうやったら先輩は私のことを異性として、海の世界の言い方だと雌として見てくれるんだろう。

「あ〜フワフワしてて気持ちいい〜。
けど、小エビちゃん、やわっこくて潰しちゃいそう〜」

ふにふにと私の胴回りや頬、二の腕など柔らかいところは余すことなく揉んでくる。
触り方に躊躇がない。
これは、まだ胸を揉まないだけマシだと言うべきなのか。
だが、触り方で確実に異性として見てないのが分かる。
こっちは口から心臓がまろび出そうなのに。
そんなのずるい。
いつもいつも私だけなのだ。

「ちょっと、触り過ぎですよ!先輩!」

「ええー?別にいいじゃん、減るもんじゃないし」

いやいや、減る。
何か乙女として大事なものが減る。
何とか絡み付いている腕から抜け出そうと試みるも、全くビクともしない。
寧ろ抜け出そうとする私を愉しそうに観察する余裕すらあるようだ。

「ふふふ、かぁいいね〜」

「っもぉー!フロイド先輩!」

「ホント、小エビちゃんって稚魚みたいだよねえ。
やわやわで弱っちいし、ちっさいし、見れば見るほど稚魚じゃん」

「ち、稚魚……?」

本当に思ったことを何ともなしにフロイド先輩は言ったのだろう。
でも、稚魚みたいってことは子供っぽいって言われてるってことでしょ?
え?それって恋愛対象外ってことでは?

「小エビじゃなくて、これから稚魚ちゃんでもいいかもー」

「絶対に嫌です!!」

「え、なに、急に〜。怒ってんの?」

「怒ってないです!」

「いや、怒ってんじゃん。
えぇ、小エビちゃん、メンドくさぁい」

フロイド先輩のその言葉に押し黙る。
面倒くさいって言われてしまったのに、「稚魚」って言われるのが嫌だったなんて言ったら、意味わからないとか言われて、更に面倒くさがられそう。
そう思うと何も言えなかった。
ひとまず何か言葉を返さないと思い、不機嫌そうに口を尖らせながら私を見るフロイド先輩に何とか笑みを向けて、もう一度言う。

「別に、怒ってないですよ」

「……あっそ。
なら、別にいいや」

その後、何も無かったように先輩は休み時間中変わらず引っ付いたまま、 日頃の愚痴を吐き散らして帰って行った。

そして私は今日のことで決心した。
ちゃんと気持ちを伝えようと。
まずは私がフロイド先輩のことを異性として見ているということを知ってもらう必要がある気がした。
しかし、肝心なのは伝え方だ。
ただ単純に「好きです」だけ伝えても、「オレも小エビちゃんのこと好きだよ〜」って軽く返されるだろうし、かといって「付き合って下さい」だと「どういうこと?」となりかねない。
加えて人魚であることから、人間とアプローチの仕方などが違う可能性も大いに有りうる。
難関過ぎる。
ひとまず人魚のアプローチ方法など調べてみるのもありかな。



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-優刻-