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夕焼け空の下、赤ん坊のほっぺたがふくよかに照らされている。赤ちゃんの顔を見るのが好きだ、街中で見かけると、じっと観察したくなる。
すれ違った親子連れを、こっそりと目で追っていた。怖がらせてしまったのだろうか、まるい大きな目をぱちくりとさせ、泣きだしてしまう。まだ若いお母さんが、大丈夫、と抱きしめる。
僕は、ぼうっとしたまま書店に入ろうとして、わっ、と声を上げた。
「あ、ぶなかったぁ」
彼と妹がならんでいた、ふたりとも特徴的な後姿で、遠くからでもすぐ分かる。ナタが何かを探している様子で、ギルくんは後ろに控えていた、とても嬉しそうに。
「また、本のプレゼントか」
「お前には関係ない」
青い表紙にレモンの絵、装丁の美しい一冊を、妹が手にとる。そう、それは僕がよく読んでいる詩集だ。
「……これは兄さんのお気に入り……兄さんは本当に、本が好きなんだ」
「前に本人に言ったら、否定されたけどな」
「そんなこと、周りの人間がよく見て、分かってればいいんだ」
「俺もそう思う。お前のそういうとこ、好きだぜ」
「……黙れ、うるさい」
いつもからかってばかり、それでも会うたび二人は仲良くなる。ギルくんの手が、おなじ青い表紙に触れた。とても大切そうに。
「真似をするな」
「まだ決まらないのかよ」
「さっさと帰れ」
「こんな美人に、一人で街を歩かせられないだろ」
「私はお前のそういうところが大嫌いだ!」
彼らが僕に気づく様子はない。僕は、ナタがもう少しだけ、迷ってくれてたらいいと思った。こうして遠くから見た方が、よく分かることもある。
ねぇ、あの二人、僕の家族なんだ。通りすがりの人に、そうやって自慢してみたかった。
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