◇ ざわめく秋 ◇
1.
秋は踊る、秋は隠れる。つむじ風のかくれんぼ、木の葉に埋めつくされた森のそこかしこで、宝探しがはじまっている。
実りの季節だ、黄金色の梢に鳥が群がる。木の実をついばむ、ふくよかな声を探せば、俺たちもごちそうにありつけた。
俺は、ぱっと落葉を散らして、思いきり地面を蹴った。慌てふためいたいくつもの翼が、ばさばさと飛び立っていく。彼らが去った後には、さらさらとした木漏れ日が舞い降りた。
落葉のダンスが終わったかと思えば、今度は光が歌いだす。秋の太陽は光の輪をつくり、そこらじゅうを紅葉がおおった。
ふかふかの枯葉の下には、胡桃に、はしばみ、どんぐりなんかが隠れている。ごちそうはそれだけじゃない、山野には
「あった!」
落葉のじゅうたんをめくって、落とし物を拾う。堅い殻につつまれた胡桃だった。かりかり囓ると甘くて、栄養もいっぱいで、冬への蓄えにぴったりだ。
なんだか鳥から横取りをしたみたいだが、森ではそれも仕方がない。そもそも彼らがついばむ前に、ここにお宝を隠したのは、いったい誰なのか、誰も知らない。
森の恵みはそれぞれに与えられている、多くも少なくもなく、俺たちに与えられたものは等分だ。だから誰も文句は言わない。月の森は、大らかな命を育む場所だった。
「あいつが食いしん坊で、よかったぜ」
あっちもこっちも、イヴァンが好きなものだらけで、オクリモノには困らない。
俺は澄んだ空気を吸い込み、いい季節だなぁと、胸いっぱいに堪能した。
胡桃をいくつも拾いながら、これは自分の巣穴に持っていくぶん、こっちはイヴァンにやるぶん、なんて考えている。
いっぱい集めて、持っていこう。
あいつは喜ぶだろうか、嬉しい顔を見せて、俺を抱きしめるだろうか。イヴァンは最近、よく俺を抱きしめる。先に大人になったくせに、まったく甘えたな奴だ。
「ヤマブドウの時なんか、おかしかったな……」
何日か前に、ふたりで山野に出かけたことを思い出しながら、俺はひとりでくすくすと笑った。
* * *