02
【23:46】
夜気にあたって、ますます酔いがまわった。ギルベルトはそう言ってから、ずっと黙り込んでいた。
つんとすました顔が、暗いショウウィンドウにうつり、街路を滑っていく。彼はマネキンよりも綺麗だ。人通りの絶えた道であっても、背を屈めて歩いたりはしない。
姿勢が良いのを眺めながら、僕はふらふらと後ろを歩いていく。するとギルベルトが急に立ち止まった。
「……ッあぁ!!」
「わぁっ、なに」
「……腹が立つ……吐き出さないと収まんねぇ」
突然、吼えたかと思えば、来いよと手だけで合図する。
「なぁに、どこ行くの?」
「ちょっと遊ぼうぜ」
特に異論もない。おとなしく、三歩後ろをついて行く。喧噪を離れて、裏路地の公園に入った。
僕はストールにうずめていた鼻先を上げ、くんくんと夜の匂いを嗅いだ。
「見ろ。ここに、センスのない三枚の名刺がある」
いくら気分が悪いとはいえ、公園のゴミ箱に吐いたりしたら嫌だな。と、そんなことを考えていたけれど、どうやら心配はいらないらしい。ちらりと周りを見渡して、誰もいないことを確かめた彼は、懐から小さな紙切れを取り出した。
「どれにする? 選ばせてやる、イヴァン。特別だぞ」
「ん〜」
まるでトランプのように広げられた紙片に、特別、という言葉の響き。
指を伸ばす素振りを見せれば、にやりと口元を曲げる。
「ん〜……ぜんぶ!」
どう、百点満点の答えでしょう、と、僕は誇らしげに首を傾げる。ギルも嬉しそう。
風のない夜の公園で、僕らは目を見合わせて笑った。
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