03

【23:54】

 わぁ、と感嘆の声をあげて、イヴァンは紙吹雪に手を広げた。
 公園のすべりだい、赤や黄色のペンキが剥げかかった、有り触れた遊具だ。なんだかな、と思いながら、俺はその上に陣取っている。びりびり破いた紙片を手のひらに溜め、ふっと息を吹きかければ、季節外れの雪になる。そんな遊びを二度も繰り返した。

「楽しいか?」
「うん、もっと!」
「次で最後……おいおい、ばっちぃから拾うな。ほら、飛ばすぞ」
「もっと、遠くにやって」

 イヴァンの瞳は、悪戯っぽく輝いている。
 気合いを入れたつもりが、酔って肺活量がたりないのか、破き方が荒すぎたのか、白い紙はそれほど飛ばなかった。
 それでも、イヴァンはその場でくるくると回る。もともと大きな体まわりを、マフラーがひらりと広げて、紙片がさらに宙を舞うのだ。なんだろう、何かに似ている。

「スノードームみたいだな、なかで人形が躍るやつ」
「オルゴール付きの?」
「そうそう……踊れよ、見ててやる」

 先程やめろと言ったばかりなのに、地面から紙片を拾って、ふっと吹いた。舞い上がっては、ちらちらと落ちていく白に合わせ、くるんと回るイヴァン。

「ははっ……あーー、ビールのみてぇ」

 冷たい瓶に、直接、口をつけたいような気分だった。
 イヴァンと月夜、この光景を静かに嚥下したい。さんざん飲んできたくせに、何を考えているのだか。
 すべりだいの手すりにもたれて、俺は煙草に火を点けた。



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