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凛の後を追って、俺達は二人で屋上に向かう。
そういえば、1、2年の頃はよくこうして屋上に来てサボっていたな、なんて思い返す。

屋上の扉の前で、俺は凛の顔をチラリと見た。
凛は顎で開けるように指示をする。

「顎かよ…」

凛に聞こえないように小さい声で呟いて俺は扉に手をかけた。

「文句あびるんじゃねーらん」
「うーうー」

聞こえてたか、と思いながら、その扉を開いた。

広がる青空に、白が基調の女子制服が浮かぶ。

風にそよぐ髪を押さえて、彼女は扉の方を振り返った。

その、姿が。

………その表情が、一瞬笑っているように見えて、俺はつい言葉を零した。

「かなさん…」
「…何か用」

聞こえた声で、我に帰る。
金城は笑ってなんかいなかったし、隣に居る凛はコイツ大丈夫か、とでも言うような表情で見ているのがヒシヒシと伝わってくる。
見なくても分かった。
空気でそう言ってくる。

「金城!」

その気まずさを振り払うように大声で、俺は彼女の名前を呼んだ。

「かんなじやーを笑わせるさぁ!
待ってろ!」

思いのままにそう叫んで、俺は屋上から駆け出した。

「えー、裕次郎!」

凛の声に耳も貸さずに俺は1番下の階までに走った。
そして、グラウンドに出て、砂を掘って文字を作っていく。

“甲斐裕次郎”と書き終えてから、屋上にまだ居る金城を見て叫ぶ。
金城の横にいる凛は見て見ぬフリだ。

「わんぬ名前や甲斐裕次郎やいびん!
3年2組ぬ窓際いちまん後ろがわんぬ席さぁ!
沖縄武術が得意で、得にわんやトンファーがしちゅんさぁ!
相手をやっつけた時ぬ快感やテニスの時と同じくらい魅力的あんに!
金城。
わん、まだ金城ぬくとぅ知らないさぁ。
やしが、少しずつやーぬくとぅ知っていきたい!
やくとぅ、わんぬ友達んかいなってください!」

金城は何のリアクションも取らなかった。
だから、俺はもう一度叫ぶ。

「あちゃーから、付き纏うあんに、ゆたしく!」

さぁ。
もう逃げられない。
それに、逃がさない。

金城。
俺は絶対にお前を笑わせる。
そう決めたから、覚悟しとけ。



次の日、朝登校したら周りがヒソヒソと話していた。
昨日の聞かれたんだろうなーなんて思いながら、まぁ気にせず登校する。
気にしたところで周りの視線は変わらないし、俺が昨日やったことも変わらない。

「おはようございます」

声を掛けられて振り向けば、木手が居た。

「おう、うきみそーちー」
「昨日はお疲れ様です」

あぁ、コイツも聞いてたクチかと思って少しゲンナリする。

「まぁ、あんなおおっぴらに宣言したからには、やり遂げてよね。
比嘉中テニス部の名にかけて」

木手は分かりづらい。
基本的に馬鹿にしているような態度が目に付くが、誰よりも仲間思いなのだ。
俺たちの代わりに、誰よりも泥をかぶる覚悟もあった。
だからこの夏、俺たちは木手についていった。

だからその言葉で、応援してくれてるんだな、って解った。
口角をにんまりと上げて、俺は頷いた。

「あたりめぇやっし」

そう言っている間に、もう学校。
下駄箱に金城の姿を見つけて、俺は駆け出した。

「うきみそーちーっ!
金城!」
「……おはよう」

変わらない冷めた目で返事をされて、俺の心が微かに悲鳴をあげる。
でも大丈夫。
まだ、大丈夫。

まだゲームは始まったばかりだ。