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“彼女”は誰なのか。
金城じゃないのなら、何故俺を知っているのか。
直接本人に聞いたら、まずいだろうか。
“彼女”は詮索するなと言った。
なら、聞かないほうがいいのだろう。
…でも。
そんな答えの出ない事を、言葉を変えてひたすら考えてた。
家族には、悩んでいる俺を見て、大災害の前触れだと言われた。
凛達には明日は大雪だとも。
一日の授業を下らないことをして過ごすのは日常でも、考え事をして過ごすのは初めてだった。
……凛と“喧嘩”した時を除いて、だけど。
「ぐあーっ!」
頭をワシワシと掻いて叫ぶ。
俺らしくないのは自分が一番解ってる。
でも。
あぁ。
どうすればいいんだよ。
なんで、今、お前は目の前に居るんだよ。
話し掛けようか掛けまいか、心の中で葛藤すること約数分。
「うきみそーちー!」
気付けば俺は話し掛けていた。
金城は俺を一瞥した。
今までに無いほど、冷たい目。
どうしたんだろう。
「体調、やな?」
そんな訳じゃないだろう。
自分でも既に解っていたけど、聞かずには居られなかった。
心臓の音が、まるで耳元でなってるみたいにばくばくと響く。
静まれ、静まれ。
心の中でお経のように呟き続ける。
金城は、口を小さく開いて、呟く。
「だぁれ?」
「…え?」
金城の冷たい視線が俺に降り注ぐ。
可笑しいだろ。
だって。
なぁ。
金城。
「わ……わん、やーが冗談あびるの初めて見たさぁ」
そう言って、カラカラと笑う。
金城はまだ冷たい目で。
解ってる。
解ってる。
俺はもしかして、つまり、第六感とやらが随分と冴えているのかもしれない。
「わたくしは冗談など言わないわ。
貴方はだぁれ?」
あぁ。
一体何がどうなってるんだ?
金城には適当に言葉を濁して、俺は逃げるように教室に入った。
倒れ込むように机に伏せて、前に座る凛の挨拶に片腕で答えた。
「どいしたんさぁ?」
「ぬーも。
うっぴぃーねぇ疲れただけあんに」
「ならゆたさんけど…」
あれ。
俺、馬鹿じゃないか?
金城、すぐに教室に来るじゃんか。
はぁ、と大きく溜息をついていると、隣からガタリと椅子を引く音が聞こえた。
ふわりと。
暖かい空気になった気がした。
ちらりと顔を上げて、山崎の表情を伺う。
すると、そこにいた山崎は。
山崎の雰囲気は、俺の知る山崎のものだった。
「うきみそーちー、山崎」
恐る恐る声を掛けると、山崎はいつもの顔で、いつものように、おはよう、と返した。
あぁ。
あの“山崎達”は一体なんだったのだろう。
質の悪い夢、だったのだろうか。
数週間、俺は目の前の山崎に変化も感じず、のどかな日々を過ごしていた。
気付けばもう11月で。
いくら暖かい沖縄といえど、肌寒く感じるようになった。
最近、帰り道が山崎と一緒になる。
始めは一緒に歩くのも嫌そうだったけど、今では俺の家までなら、一緒に帰ってくれる。
あと、よくHRをサボっていたことに、変化が現れた。
HRだけでなく、普段の授業も消えることが多くなった。
例の「山崎たち」を知らない俺だったら、探しに行っていたかもしれない。
だが、俺はどうしても嫌な予感がして、そういうときはまるで腫れ物の様に山崎を避ける日々だ。
でも、やっぱり目の前の山崎は普段の山崎だから。
もしかしてあの時のことは、悪い夢なんじゃないかと思うようになりつつあった。