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三月三日、私は学校を終えてから、直ぐに家に帰って、着替えて平古場家に向かう。
夕ご飯が出来るまで愼の部屋でおしゃべりだ。
もう、三月。
現三年生は卒業して、私たちが三年になる。
クラス替えもあるし。
来年も同じクラスになれるといいね、なんて話していた。
できたよ、というおばさんの声が聞こえて、私たちは居間に向かった。
「あ、ひなさん」
部屋から出たところで、凛君に会う。
「凛君!
お邪魔してます」
「おー、いらっしゃい」
くすくすと笑いながらそんな問答をして、一緒に向かう。
「ひなさん!」
ふと、前を歩く凛君が振り返った。
「何?」
首を傾げると、凛君は今身につけているネックレスを揺らした。
「あ」
それは私があげたプレゼントで。
「お気に入り!」
そう言って身につけてくれている凛君が嬉しそうで。
私も嬉しくて。
「似合ってるよ」
「にふぇーでーびる!」
二人で笑った。
その日、帰ってから、着替えもせずに寝転がる。
いつもと変わらない天井なのに、気持ちはぽかぽかしていて変な気分だ。
「なんか、すっかり平古場家と仲良しだなぁ…」
転校してからまだ二ヶ月しか経ってないのに。
愼と出会えて良かった。
凛君と出会えて良かった。
おばさんや、おじさんや、おばあさんと出会えて良かった。
こっちの世界に来て嘆いた時もあったけど、皆に出会えて、嘆きも消えていく。
気が付けば毎日笑っていた。
「ありがとう」
誰に言うでもなく呟いて。
誰もいない部屋に消えていく。
その現象が寂しいときもあったけど。
何故か今日は、心地よかった。
「にふぇーでーびる」
呟いてから、目をつむると。
あっという間に意識が遠のいた。
目を覚ましたとき。
私は、知らない部屋にいた。
いや、違う。
私の部屋だ。
元の世界の、私の部屋だ。
「夢…?」
長い夢を、見てたのかな。
…ううん、そんな訳ない。
だって、着てる服は向こうで買った服だ。
「どういう、こと…?」
何かと思って呆然としていると、ピロリロ、と携帯が鳴った。
どうやらメールが届いたらしい。
開いて、その内容を読む。
「なに、これ」
どういうこと。
「私は、こいつらに遊ばれてるの…?」
涙が、零れた。
金城ひな様
お久しぶりです。
我々の都合で世界を移動させた貴女に、朗報です。
先日の勝手、ご無礼をしたこと、大変申し訳なく思っております。
そこで、最後の選択のお時間です。
貴女が生まれたこの世界か。
貴女が二ヶ月かけて慣れ親しんだ向こうの世界か。
お好きな世界をお選び下さいませ。
お時間の猶予は、一週間。
三月十日までに、こちらのメールに返信をお願いいたします。
尚、返信がない場合。
こちらの判断で、決めさせていただきます。
今回の選択後。
これ以上、我々は貴女に干渉いたしません。
これは、正真正銘“最後の選択”です。
悔いの残らないよう、選択下さいませ。
貴女が、幸せな一生を送れますよう。
我々も心より願っております。