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凛君の受験の日。

平古場一家と、平古場家で話しながら凛君の帰りを待つ。
別に今日結果が解る訳じゃないけど、つい不安になってしまう。
おばさんもそうみたいで、さっきから台所と居間を行き来してばかりだ。

「あんまー、落ち着いてほしいんやしが。
鬱陶しい…」
「あー、わかっちょるんやしがーっ」

愼がおばさんをじとっとした目で見ている。
頭を振っているおばさんはあーー、と幾度となく叫んでいる。
子は自分で勉強してるから不安はなくても、親は何も出来ずに見てるだけだから、不安が募るらしい。

「まぁ、凛を待つしかねーらん。
昼飯かめー」
「……やさ」
「だーるなぁ…」

おばあさんの言葉に、おじさんと愼が頷いた。



夕方になって、凛君が帰ってきた。
口々にお帰り、と凛君を迎える。

「どうだったんばぁ?」

おばさんの問いに、凛君は溜め息を吐いた。

「受かるんじゃねー?
先生も人員ギリギリってあびってたし……」

…そうなんだ。
人員ギリギリという言葉に、安心の息を吐いた。

「やしが、もしもがあるあんに!?」

おばさんは心配過ぎて少々パニックになっている気がする。

「…あんまー。
わんぬ時もそうあびって、結局受けた人全員受かったぬ覚えちょる?」

愼が問うと、おばさんはぴたっと動きを止めた。

「そういえば、やーが受かったんやくとぅ、凛が落ちる訳ねーらん」
「愼ぬが成績低いからやー」

おばさんとおばあさんの言葉に私は思わずえ、と呟いた。

「愼、そんなに悪いの…?」
「…ほ、ほっといて!」

ぱっぱと手で払われて私は苦笑する他なかった。
今度のテスト勉強は一緒にしてみよう。

おばさん達が賑やかになったところで、凛君はふっと息を吐いた。

「お疲れ様、凛君」
「にふぇーでーびる、ひなさん」

少し力のない笑みは、凛君には珍しいものだった。

「疲れた?」
「んー…、少し、やー」

指でほんの少し隙間を表す。
その様子が幼くて、可愛らしかった。

「受かるって解っちょるんやしが…」
「そっか。
今日はゆっくり休んでね」
「おぅ」

にかっと笑う。
その様子は、本当に自分の合格を確信している笑みで、私は来年度は凛君と同じ学校に通えるのだと楽しみになった。

愼が居て、凛君が居る。
時々平古場家で夕飯をご馳走になって…なんて、どれほど満ち足りた生活なんだろう。

思わず私も、口角が上がった。

「凛君、受かったら、愼と登校するの?」
「「はぁ!?」」

愼と凛君にハモられた。

「ぬーんちわったーがまじゅん通わなくちゃいけないんさぁ!?」

愼に詰め寄られて、私は苦笑して誤魔化した。
まぁ、その反応は予想してた。
凛君も後ろで同意している。

「ご、ごめんごめん。
冗談…」

愼と凛君が同時に肩をなで下ろした。






翌々週、月曜日。
凛君が合格したことを愼から聞いた。

「でね、凛がやーに会いたいってあびってたんさー」
「凛君が?」
「そ」

愼は面倒そうに息を吐いて、髪をイジりながら呟く。

「ウチ、中学から携帯オーケーなんやしが、
凛や昨日合格解ったから、昨日買って貰ったみたい」
「そうなんだ?」

私は家電買うのが面倒だったから携帯買ってしまったけど。
このまま高校に上がれば、携帯を使う機会も増えるだろうし。

「やくとぅ、ひなぬアド知りたいんだとうむうさぁ」
「愼が教えてよかったのに」

じとっとした目で見られた。
え、何?
そう思ってきょとんとしていると、愼が大袈裟に溜め息を吐いた。

「初めて凛が可哀想んかいうむえた」
「え?」
「暇なら会ってあげてよ。
受験も終わって暇しちょるみたい」
「まぁ、全然いいけど…いつ?」
「日曜や暇?」

日付と曜日を元に考えるけど、まぁそもそも平古場家に呼ばれる以外の予定は私にない。

「うん、暇ー」
「じゃ、10時海集合。
ゆたしく」
「平古場家じゃなくて?」
「まぁ、わんから凛へぬ合格祝いだとうむて付き合ってあげてー」
「愼からの合格祝いなのに私が凛君に会うって、凛君可哀想じゃない?」

本日二度目の冷たい目。
え、私何か間違ったこと言った?
またまた大きな溜め息を吐いて、愼は首を振った。

「もうぬーもあびらん。
大人しく凛に会って」
「はい」

ゆるがない声に、私はすぐに頷いた。