6
凛君の受験の日。
平古場一家と、平古場家で話しながら凛君の帰りを待つ。
別に今日結果が解る訳じゃないけど、つい不安になってしまう。
おばさんもそうみたいで、さっきから台所と居間を行き来してばかりだ。
「あんまー、落ち着いてほしいんやしが。
鬱陶しい…」
「あー、わかっちょるんやしがーっ」
愼がおばさんをじとっとした目で見ている。
頭を振っているおばさんはあーー、と幾度となく叫んでいる。
子は自分で勉強してるから不安はなくても、親は何も出来ずに見てるだけだから、不安が募るらしい。
「まぁ、凛を待つしかねーらん。
昼飯かめー」
「……やさ」
「だーるなぁ…」
おばあさんの言葉に、おじさんと愼が頷いた。
夕方になって、凛君が帰ってきた。
口々にお帰り、と凛君を迎える。
「どうだったんばぁ?」
おばさんの問いに、凛君は溜め息を吐いた。
「受かるんじゃねー?
先生も人員ギリギリってあびってたし……」
…そうなんだ。
人員ギリギリという言葉に、安心の息を吐いた。
「やしが、もしもがあるあんに!?」
おばさんは心配過ぎて少々パニックになっている気がする。
「…あんまー。
わんぬ時もそうあびって、結局受けた人全員受かったぬ覚えちょる?」
愼が問うと、おばさんはぴたっと動きを止めた。
「そういえば、やーが受かったんやくとぅ、凛が落ちる訳ねーらん」
「愼ぬが成績低いからやー」
おばさんとおばあさんの言葉に私は思わずえ、と呟いた。
「愼、そんなに悪いの…?」
「…ほ、ほっといて!」
ぱっぱと手で払われて私は苦笑する他なかった。
今度のテスト勉強は一緒にしてみよう。
おばさん達が賑やかになったところで、凛君はふっと息を吐いた。
「お疲れ様、凛君」
「にふぇーでーびる、ひなさん」
少し力のない笑みは、凛君には珍しいものだった。
「疲れた?」
「んー…、少し、やー」
指でほんの少し隙間を表す。
その様子が幼くて、可愛らしかった。
「受かるって解っちょるんやしが…」
「そっか。
今日はゆっくり休んでね」
「おぅ」
にかっと笑う。
その様子は、本当に自分の合格を確信している笑みで、私は来年度は凛君と同じ学校に通えるのだと楽しみになった。
愼が居て、凛君が居る。
時々平古場家で夕飯をご馳走になって…なんて、どれほど満ち足りた生活なんだろう。
思わず私も、口角が上がった。
「凛君、受かったら、愼と登校するの?」
「「はぁ!?」」
愼と凛君にハモられた。
「ぬーんちわったーがまじゅん通わなくちゃいけないんさぁ!?」
愼に詰め寄られて、私は苦笑して誤魔化した。
まぁ、その反応は予想してた。
凛君も後ろで同意している。
「ご、ごめんごめん。
冗談…」
愼と凛君が同時に肩をなで下ろした。
翌々週、月曜日。
凛君が合格したことを愼から聞いた。
「でね、凛がやーに会いたいってあびってたんさー」
「凛君が?」
「そ」
愼は面倒そうに息を吐いて、髪をイジりながら呟く。
「ウチ、中学から携帯オーケーなんやしが、
凛や昨日合格解ったから、昨日買って貰ったみたい」
「そうなんだ?」
私は家電買うのが面倒だったから携帯買ってしまったけど。
このまま高校に上がれば、携帯を使う機会も増えるだろうし。
「やくとぅ、ひなぬアド知りたいんだとうむうさぁ」
「愼が教えてよかったのに」
じとっとした目で見られた。
え、何?
そう思ってきょとんとしていると、愼が大袈裟に溜め息を吐いた。
「初めて凛が可哀想んかいうむえた」
「え?」
「暇なら会ってあげてよ。
受験も終わって暇しちょるみたい」
「まぁ、全然いいけど…いつ?」
「日曜や暇?」
日付と曜日を元に考えるけど、まぁそもそも平古場家に呼ばれる以外の予定は私にない。
「うん、暇ー」
「じゃ、10時海集合。
ゆたしく」
「平古場家じゃなくて?」
「まぁ、わんから凛へぬ合格祝いだとうむて付き合ってあげてー」
「愼からの合格祝いなのに私が凛君に会うって、凛君可哀想じゃない?」
本日二度目の冷たい目。
え、私何か間違ったこと言った?
またまた大きな溜め息を吐いて、愼は首を振った。
「もうぬーもあびらん。
大人しく凛に会って」
「はい」
ゆるがない声に、私はすぐに頷いた。