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夏から冬にかけての、独りの時間。
それは実際過ごしてみれば、あっという間だった。
そもそも部活が土日ともあるし、暇になる時が無い。
それに、2学期は何かと学校行事が詰まってる。
時が早く感じるのも当たり前のことだった。

夜は今まで以上にメールや電話に興じて。
終わる頃になって、案外遠距離恋愛も楽しいもんだなんて思った。



大晦日と元日はひなはテレビに引っ張りだこだった。
その度に聞く歌に耳を預ける。
トークになれば殆どの番組で24時間テレビの話だ。

その度に俺は家族に肘で付かれたりからかわれたり。
全国放送でコクられたんだから、まぁしょうがないかもしれないけど。

あぁ、くそう。
怒鳴ってやりたいのに、怒鳴れない。

だって、テレビの中で、真っ赤な顔で慌てるひなが可愛すぎるから。



三が日を過ぎて、部活が始まった。
その中で、一日、またサボって海に来る。
朝から見つめてたいた海が、今は少し汚くなった。
どうやら午前中の方が綺麗っていうのは本当らしい。
こんなに長く海にいて、足も浸けなかったのは初めてかもしれない。

「やっぱりくぬ海んかい居たな、凛!」

にっと裕次郎が笑う。
振り向けば、いつの間にか後ろに永四郎達がいた。

「かしまさい、やったー、部活はどうしたんばぁ?」

まだ昼。
普段だったら午後もあるのに。

「正月から一日やるつもり、あぬ顧問にはねーらんさぁ」
「どうせ、本格的んかい始めるぬは学校が始まってからやっしー」

知念と田仁志が答える。
言われてみれば確かに、と頷いてしまう。
あの妙に抜けてる顧問がこの時期に張り切る訳が無い、か。
それに、昨日も午前中で終わった気がする。

「ところで、金城クンはまだ帰ってこないんですか?」
「ちょぎりーさー、空港は出たらしいんどー?」

永四郎の問いに、靴を脱ぎながら答える。

「なら、直ぐに来るぬか?」
「さぁな」

堤防から飛び降りて俺は冬の砂浜に足を着けた。
歩きながら海に足を入れれば、いつもよりも冷たいそれに少し、驚いた。

「凛ちゃん!」

特有の呼び方で声を掛けられて、俺は頬がゆるんだ。
振り返らなくても解る。
裕次郎達が騒がなくたって解る。
ひなは、俺の方に駆けてくるって。
振り返って、両手を広げれば、ひなは飛び込んできた。

あぁ、やっと抱き締められた。

久しぶりのひなの香りと温かさ。
もう、離さなくていいんだよな。



しまんちゅぬ歌声が、また此の海に響き渡る。