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次の日、朝起きて朝食を作りながらニュースを見る。
芸能のコーナーに入ってから、多くの新聞に占めているのは、見知った顔。

『人気歌手である金城ひなさんに、不倫発覚です!』

あぁ、やっぱりなぁ。
あの時の、聞こえた音。
ひなを陥れる為か、それとも別のことなのか。
まぁ、大橋さんたちがどうにかしてくれるだろ、うん。

『記事を読んでみると、約半年前に結婚した通称“凛さん”は黒髪、ショートカットという情報。
だが、昨日羽田空港にいた金城さんと一緒にいた男性は金髪、ロングヘア。
金城さんは写真の通り、男性に抱きついて、沖縄方言で「でーじしちゅん」、つまり大好き、と言った。
“凛さん”の心中やいかに、ということです』

なぁにが凛さんの心中やいかに、だ!

「だぁや、わんやっしー!」

この、阿呆!
トゥルル、携帯の着信音が響く。
嫌な予感がしてならない。
ディスプレイも見ずに繋げてみたら、予想通りあの声が楽しそうにしていた。

『凛さん!
最愛ぬ奥様に不倫されたお気持ちやいかがでしょうかっ!』

そう言った後、奴は大声で笑った。

「裕次郎、いつか死なす!」
『わっさんわっさん!
やーだろ、金髪ロングヘア?』
「あったりめぇやっし、ふりむん」

からからと笑った裕次郎に答える。
罵倒は決して忘れずに。

『やんやー。
有り得んとうむたさぁ』
「で、用やだぁだけばぁ?」
『いや?
ちゅー、夜やーぬ家押し掛けてゆたさん?』
「やな、ってあびてぃところで、来るんだろ」

前に悪いと言っても来たのは裕次郎本人だった。
というか、何だかんだ言ってしょっちゅう来るじゃんか。
いい加減寄り道癖をなんとかしろ、と言ってやりたい。

『まぁなー。
じゃ、夜に行くさぁ、ひなにゆたしく』
「おう」

さて。
どうやら今日は早く帰らなくちゃならないっぽい。
いくら気を許してる裕次郎とはいえ、ひなと二人きりになんてできないからな。






昼休み、携帯を開いてみたら大橋さんから何度か電話があった。
慌てて掛け直してみたら、直ぐに繋がる。

「もしもし、大橋さんですか?」
『平古場君?
一応聞きたいんだけど、あの写真、君よね?』

あー、微かに忘れてたのに。
あの写真撮ったの誰だ、どうにかしてやりたい。

「はい、俺です」
『よね。
よかったぁ、平古場君に繋がって…。
ひなに繋がらなくて……』
「ひなに、ですか…?」
『うん、平古場君並にあの子にも掛けてるんだけどねー…』

可笑しい。
もう何時間も大橋さんからの電話は繋がってる。

「……、俺からも掛けてみます」
『うん、あ、私には掛け直さなくて大丈夫だから、そう伝えて』
「はい」

大橋さんの電話を切ってから、俺はひなに電話を掛ける。
そうしたら、やっぱり繋がらなくて、今度は家の電話に掛ける。

少し待ったら、ガチャ、という音がして、ひなは電話に出た。

『はい、平古場ですが』

ひなが、俺と同じ苗字を電話口で言うのを初めて聞いた。

あ、やばい。
可愛い。

俺は結婚して何ヶ月も経つのに、改めてそう思った。

「ひな?」
『あぃっ、凛ちゃん?
ぬうがんばやーよ?』
「いや、大橋さんが、ちゅーぬ記事見てやーんかい電話したらしいんやしが、繋がらねーらんって。
やしが、わんが掛けたんばぁよ」

電話の向こうで、ひながえぇ、と声を上げた。
何かを漁るような音がしたから、きっと携帯を探してるんだろう。
あ、とひなが呟く声がした。
きっと見つけたんだろう。
カチカチと携帯をいじる音がした後、ひなは呟いた。

『ぅわー、どうしよ……。
あー、電話した方がゆたさんさぁ?』
「掛けなくてゆたさんって」
『しんけん?』

ひなが聞くから、俺は頷いた。
そっか、と呟いてから、ひなは電話、ありがとう、と言った。

「いや、大丈夫。
じゃ、また夜な」
『うん、午後もちばりよー』

ひなとの電話も切って、俺は漸く昼食にありつく事にした。