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放課後、コートのそばで部活中の凛ちゃんを見ていた。
凛ちゃんは中学の時よりもずっと強くなった。
そして、中学の時よりもずっと楽しそうにテニスをしていた。
中学の時も十分楽しそうだったけど。
でも、あの時は辛いことの方が多そうだった。
テニスそのものが楽しそうなのは、やっぱり高校になってからだ。
ちらりと、凛ちゃんと目が合う。
私が手を振ると、凛ちゃんはラケットを掲げた。
こんな、誰にでも出来ること。
凛ちゃんと出来るのは、唯一私だけだと自惚れてもいいよね。
そんな些細な優越感。
私がこの優越感に浸るのが好きなのを、まだ誰も知らない。
気づくこともない。
でもね。
しょうがないとも思うの。
だって、凛ちゃんは余りにも人気で、皆が大好きだから。
皆に愛されてるから。
私はしょうもなく、その優越感が大好きなのだ。
そして何より、ゆっくりと流れる時間が、私は大好きだった。
帰り道、久々に凛ちゃんと帰る。
最近はテニス部も忙しくて、私は私で用事があったから、中々一緒に帰ることはなかったのだ。
凛ちゃんに、部活はどうかと聞けば、やっぱり、楽しいと答えた。
「羨ましいやー。
わんも、夢中んかいなれるもの見つけたいさぁ」
「ひななら、すぐに見つかるとうむうさぁ」
私の呟きにそう笑って言ってくれた凛ちゃん。
嬉しくて、その笑顔が眩しくて、つい見とれた。
「ひな、危ねーらんっ」
そう言われて、凛ちゃんに抱き寄せられた。
すぐそばを通る車に、あ、私、ちっとも気付かなかった。
なんて思って。
でも、私が気になったのは車なんかじゃなくて。
すぐ目の前にある凛ちゃんの身体だった。
いつも傍に居た凛ちゃんだけど、こんなに体を寄せたことなんて記憶上殆ど無くて。
顔が真っ赤になるのが自分でわかるようだった。
「わ、わっさん!」
そんな私を見て、凛ちゃんは慌てて私の肩から手を離した。
今までで、凛ちゃんをこんなに近く、こんなに遠く感じたことなんてあっただろうか。
私たちの時間は、いつ、回り始めたのだろう。