5
休日、部屋に居た私のもとに、凛ちゃんがやってきた。
「ひなー、くりから裕次郎たちと海んかい行ちゅんやしが、やーも来いよ」
「甲斐君たちって…。
いきがばっかやっしー」
私が呟くと、凛ちゃんは首を横に振った。
「知念ぬ妹も来るんばぁよ。
やくとぅ、いなぐもいてるさぁ」
知念君の妹って、まだ小学生だった気がするのだけど。
「わんや子守り…?」
そう聞くと、凛ちゃんは気まずそうに視線を逸らした。
その顔が余りにも予想通りだったから、私はクスリと笑ってしまった。
「まぁ、知念君ぬ妹しちゅんやくとぅゆたさんよ」
私が呟くと、凛ちゃんは笑った。
「じゃ行くあんにー!」
「ちょっ、凛ちゃん!
支度させて!」
手を引っ張る凛ちゃんを止めて、私は支度を始めた。
流石に凛ちゃんのように、私服で泳ぎたくはない。
部屋の隅でいじけるようにして座る凛ちゃん。
そんな凛ちゃんを視界の隅に捕らえて、私は気付かれない様に笑った。
気づかないよね、凛ちゃんは。
凛ちゃんが私を誘ってくれるだけで、どれだけ嬉しいことか。
どれだけ、幸せなことか。
メンバーがメンバーだから、っていう理由からかもしれないけど。
でも、凛ちゃんが一番心を開いているメンバーと遊べる女の子なんて、他にいない。
私だけの、特権。
自転車がパンクしてたから、私たちは歩いて海に向かう。
走ろうとする凛ちゃんを抑えるのが大変だったけど、まぁそれも楽しい。
海に着くと、もう全員揃っていた。
遅刻魔で有名な甲斐君までいて、正直びっくり。
「裕次郎、珍しいやー。
遅刻してないんどー?」
それは凛ちゃんも同じだったようで、そう言っていた。
「やー、わんぬくとぅ何だと思ってるんばぁ?」
凛ちゃんの言葉に、甲斐君がじろりと睨む。
「わっさいびーん、甲斐君。
わんも、甲斐君ぬ方が遅いかと思ってたさぁ」
私が言うと、甲斐君の顔はぱっと半泣きに変わり、わーん、と言いながら海へと駆けていく。
それを追いかけるように、凛ちゃんも海へ向かった。
「ねーねー、わったーも海んかい入ろー?」
「うん、入ろっか!」
知念君の妹に手を握られ、私は笑った。
知念君は私に一言頼む、と言ってから凛ちゃん達の方へと行った。
いつもと変わらない、ありふれた日常。
いつものように、服を脱いで、下に着ていた水着姿になる。
浮き輪を持って、私は知念君の妹と、海へ向かった。
浮き輪に乗っかって浮かんでいると、妹二人組が浮き輪にしがみついた。
「ちゃーさびたが?」
何かあったのかと思って聞いてみると、二人はにっこりと笑う。
どうやら体に異常は無いみたいだった。
「ねーねー、凛にーにーと付き合ってねーらんぬ?」
そう聞かれて、私は目を丸くする。
でも、すぐにそういう年頃なんだと思って、やんわりと否定した。
そうしたら、二人でえー、と声を揃える。
「やしが、にーにー、ひっちー言っちょるよ。
ねーねーぬくとぅしちゅんだ、って!」
私は目を点にしてしまう。
あぁ。
あぁ、どうか嘘だと言ってほしい。
二人はポカンとしている私に水をかけてから、また言葉を紡ぐ。
「しんけんに」
「凛にーにー、言ってたんばぁよ?」
あぁ、もう。
この小悪魔め!
時間は戻らない。
どうかどうか、この言葉が嘘ではありませんように。
冗談ではありませんように。
でもそうしたら、彼は何で恋愛に興味ないと言ったのでしょうか?