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休日、部屋に居た私のもとに、凛ちゃんがやってきた。

「ひなー、くりから裕次郎たちと海んかい行ちゅんやしが、やーも来いよ」
「甲斐君たちって…。
いきがばっかやっしー」

私が呟くと、凛ちゃんは首を横に振った。

「知念ぬ妹も来るんばぁよ。
やくとぅ、いなぐもいてるさぁ」

知念君の妹って、まだ小学生だった気がするのだけど。

「わんや子守り…?」

そう聞くと、凛ちゃんは気まずそうに視線を逸らした。
その顔が余りにも予想通りだったから、私はクスリと笑ってしまった。

「まぁ、知念君ぬ妹しちゅんやくとぅゆたさんよ」

私が呟くと、凛ちゃんは笑った。

「じゃ行くあんにー!」
「ちょっ、凛ちゃん!
支度させて!」

手を引っ張る凛ちゃんを止めて、私は支度を始めた。
流石に凛ちゃんのように、私服で泳ぎたくはない。

部屋の隅でいじけるようにして座る凛ちゃん。
そんな凛ちゃんを視界の隅に捕らえて、私は気付かれない様に笑った。



気づかないよね、凛ちゃんは。
凛ちゃんが私を誘ってくれるだけで、どれだけ嬉しいことか。
どれだけ、幸せなことか。
メンバーがメンバーだから、っていう理由からかもしれないけど。
でも、凛ちゃんが一番心を開いているメンバーと遊べる女の子なんて、他にいない。



私だけの、特権。






自転車がパンクしてたから、私たちは歩いて海に向かう。
走ろうとする凛ちゃんを抑えるのが大変だったけど、まぁそれも楽しい。

海に着くと、もう全員揃っていた。
遅刻魔で有名な甲斐君までいて、正直びっくり。

「裕次郎、珍しいやー。
遅刻してないんどー?」

それは凛ちゃんも同じだったようで、そう言っていた。

「やー、わんぬくとぅ何だと思ってるんばぁ?」

凛ちゃんの言葉に、甲斐君がじろりと睨む。

「わっさいびーん、甲斐君。
わんも、甲斐君ぬ方が遅いかと思ってたさぁ」

私が言うと、甲斐君の顔はぱっと半泣きに変わり、わーん、と言いながら海へと駆けていく。
それを追いかけるように、凛ちゃんも海へ向かった。

「ねーねー、わったーも海んかい入ろー?」
「うん、入ろっか!」

知念君の妹に手を握られ、私は笑った。
知念君は私に一言頼む、と言ってから凛ちゃん達の方へと行った。

いつもと変わらない、ありふれた日常。
いつものように、服を脱いで、下に着ていた水着姿になる。
浮き輪を持って、私は知念君の妹と、海へ向かった。



浮き輪に乗っかって浮かんでいると、妹二人組が浮き輪にしがみついた。

「ちゃーさびたが?」

何かあったのかと思って聞いてみると、二人はにっこりと笑う。
どうやら体に異常は無いみたいだった。

「ねーねー、凛にーにーと付き合ってねーらんぬ?」

そう聞かれて、私は目を丸くする。
でも、すぐにそういう年頃なんだと思って、やんわりと否定した。
そうしたら、二人でえー、と声を揃える。

「やしが、にーにー、ひっちー言っちょるよ。
ねーねーぬくとぅしちゅんだ、って!」

私は目を点にしてしまう。

あぁ。
あぁ、どうか嘘だと言ってほしい。

二人はポカンとしている私に水をかけてから、また言葉を紡ぐ。

「しんけんに」
「凛にーにー、言ってたんばぁよ?」

あぁ、もう。
この小悪魔め!

時間は戻らない。
どうかどうか、この言葉が嘘ではありませんように。
冗談ではありませんように。

でもそうしたら、彼は何で恋愛に興味ないと言ったのでしょうか?