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結果として、村中夫妻の式まであと数時間というところで江戸川コナンから最新の情報を得た。
式場、そして犯人の狙い等を最低限の言葉で共通認識としたあと、僕は夫妻がチャーターしたヘリについてこちらで対応する算段をつけた。
無事結婚式場の屋上にヘリで向かった僕はそこでプラーミャと再会することとなった。
到着した屋上ではコナン君が奴を追い詰めているようだ。
身体能力等から男だと思っていたが、女だったプラーミャはその目を釣り上げて薄ら笑う。
こちらをバカにしているのがひしひしと伝わってくる表情だった。
扉を開けて相対しても僕のことには気付かずコナン君と話続けているところから、自分の勝利を確信しており、警戒が疎かになっている。
この日本で褐色の金髪なんてそう居ないのに、それにすら目もくれないなんて。
笑ってしまうのはこちらの方だ。

「さっき言ったはずだ。
私の正体を知る者は誰一人生かすことはできないと」

その一言で十分分かる。
対象は、僕はもちろん、今このビルに居る人間、そして、クリスティーヌとして関わってきた全ての人間なのだと。

「ノコノコと集まって、馬鹿な奴らだ。
ハロウィンを盛り上げるための飾りくらいにしか思ってないんだろ」

そして、その一言で確定する。
やはりこればかりは、松田と萩原がどう頑張っても解体できるものではないようだ。
渋谷のメインストリートにある装飾の中の液体全てが、奴の液体爆弾である。
渋谷の爆弾についてつらつらと語ったプラーミャは高笑いで自分の勝利を、成功を叫んだ。

「それが聞きたかったんだよ」

その様子があまりに滑稽で、僕は口角が上がるのを止められなかった。
プラーミャの手にあるスマートフォンを蹴り上げて、掌底を食らわせ肩を外す。
スマートフォンはヘリのプロペラに当たり破壊された。
痛みにのたうち回るプラーミャのそばに立ちこちらの事情を説明してやれば奴は歯を食いしばる。
ついでにヘリポートからは死角になる位置からヒロ、松田、顔は知らないだろうが萩原も揃って奴を囲えば、プラーミャは目を見張った。

「貴様等…何故だ…何故生きている!」
「優秀な協力者のお陰で、お前が動き出したことはこちらでも確認していてね。
先にデータはいじらせてもらったよ」

言外にプラーミャの集めた情報がダミーだと言うヒロの言葉に、悔しさからだろう、段々と表情を歪めるプラーミャ。
その表情は中々見ものだった。
…別に、性格は悪くない。

ビルの入口からは捜査一課の伊達、そして佐藤、高木両刑事もやって来て完全なる四面楚歌だった。
 
「さぁ、手を挙げて。
頭の後ろに回すんだ」

そう言うと、プラーミャは頷きながら肩の上がる左手を素直に上げる。

「あぁ、わかったよ…!」

一筋縄では行かないだろうと思ったが、その一言と共に髪に隠していた手榴弾を渋谷の街へと投げ捨てる。

「こうなったら一人でも多く道連れだ!」

手持ちの銃で落下する前に撃ち抜こうとするが、僕の位置からはライトが当たって視界が妨害される。

「くっ…」
「任せて」

そう言ったヒロの位置からは問題なく見えたようで、的確に手榴弾を撃ち抜き、爆破した。
手榴弾に気を取られているうちに僕が乗ってきたヘリに乗り機体を上昇させたプラーミャは、隠し持っていたもう一台のスマートフォンを楽しそうに操作する。
ヘリの中で奴が何を言っているのかはおおよそしか分からないが、察しは着く。

その様子を見て、僕は、笑った。
予想通り僕の爆弾を遠隔で爆破させようとしたヤツは、ヘリに隠しておいた自身の爆弾によって窮地に陥った。
ヘリからは爆炎が上がり、正常な飛行が出来ないようで不安定な軌道を描く。

「ふっ。
こんなこともあろうかと、君からの贈り物は返しておいたよ」

首に嵌めていた邪魔なレプリカを空に放り出し、暴走するヘリに狙いを定める。
ヘリポートまで上がってきていた班長の姿を見つけて僕は叫んだ。

「班長!」
「ん?
って、またかよ!」

そう言いつつも、その手は直ぐに組まれ僕を墜落していくヘリへと誘ってくれる。
本当に、いい同期を持ったものだ。
飛び移ったヘリの中でプラーミャと殴り合う。
空間が限定されているということもあり、他の飛び道具もないということもあり、三年前よりは対等な勝負になった。
筋肉量の違いで圧倒的に男が有利なはずだが、この状況下でやっと互角とは。
少々自信がなくなるところではあるが、今はそんな場合ではない。

「くそぉぉ、あの女だけでも潰してやりたかったなァ!?」

その言葉で、頭に血が昇ったのが分かった。

「あの車の男たち、松田と諸伏だな。
随分と大切にしているようじゃないか?
あれ以来一度も見かけなかった!」
「お前には、関係ないさ!」

飛んできた拳を避けて、顔面を殴りつける。
それも当たり前に避けられて中々どちらも当たらず、という攻防がヘリの落下と共に続くが、途中僕の体がヘリの外へと投げ出された。
逃がしてなるものかとプラーミャの手首にしがみ付く。
頭を足蹴にして抵抗されるが、この腕を折ってでも、そして自分の腕を失くしてでも離すものか。

「あの女が傷付いて、お前の顔が歪むのが見れないのが残念だな!」

地面が近づくヘリの中、負け惜しみのように言われた言葉。
ひなさんが傷付く、なんて。

「そんな事…させるかァ!」

僕が叫ぶのと、ヘリの落下は同時だった。
落下の衝撃による爆発に煽られて身体は投げ出された。
流石にとった受け身も完全とは言えず、体の節々が痛む。
視界の中にあったスペアのスマートフォンが破壊されているのを確認したところで、コツリと足音が聞こえた。

左手に刃渡りの長いナイフを持ったプラーミャが立っている。

「貴様のせいで。
貴様如きのせいで、私の計画が台無しだ!
死ねェ!」

ここまでか。
流石にすぐ起き上がることはできず、振り上げられたナイフの痛みを覚悟した。
とうに痛みが来ているであろう時間が経過しても来ない痛み。
ドサ、という物が地面に着地する音に目を開けると、そこには村中が立っていた。
どうやら手刀で気絶させたらしい。

「元刑事として、これ以上犯罪を見過ごす訳には行かない」
「…あなたは…」
「君は早くここから離れなさい」

直接会ったことのない男に言われて、目を見開く。

「ここに居たらまずいんじゃないのか。
君は公安の人間だろう?」
「何故それを…」
「長いこと刑事をやってたんでね、わかるんだよ勘で」

婚約者にはこの勘は働かなかったようだがな、と自嘲する彼に向ける言葉を、今の僕では見つけられなかった。

プラーミャの捕縛はそのまま彼に託し、表舞台から姿を隠す。
今から大逆転するだけの力はヤツにも残っていないだろう。
とにかく今はこの渋谷を火の海にする爆弾を止めなくてはならない。
…とは言っても、これは僕には立つことの許されない表舞台だ。
そちらに関しては同期たちと、何よりあの少年に託し、僕は爆発が防がれた後に向けて動き出した。