5



三人で食事をしながら話していると時間はあっという間だ。
途中でハロも起き出して、降谷さんがギターを弾くと嬉しそうに鳴いた。

「ベース持ってくればよかったな」

そう言う諸伏さんに、そんな場面に居合わせたらご褒美どころでは無い、なんて思ってしまう。

「いつか、降谷さんと諸伏さんが二人で演奏してるところ聞きたいな」

沢山いるお客さんの、ひとりでいい。
二人のセッションはきっとなによりも尊いものだろう。

「ひなさんは何か弾けないのか?」

事故から目が覚めて以降、読書以外は無趣味で生きてきた。
でも、前の世界ではピアノを習っていた。
…降谷さんたちの演奏程上手くはないけれど、人並みには弾けるだろう。

「キーボードなら、ワンチャン?」
「じゃあ、三人で弾こう」

当たり前に言われて全力で頭を振る。

「いや!
降谷さんと諸伏さんみたいなイケメンと演奏したら炎上する!」

何をアホな事を、と降谷さんはジト目だし、諸伏さんは一周回って爆笑からニヤニヤ笑いになってきた。
完全に面白がられている。

「今キーボードは持ってるのか?」
「持ってないよ。
だから練習できないし、」
「じゃあ誕生日プレゼントってことで俺たちから贈ろうか」

私の言葉を遮ってそう言った諸伏さんに頷く降谷さん。
待って。
何かが可笑しい。
主に話の進み方が。

「っていうか誕生日じゃないし」
「反応遅すぎないか?」

降谷さんに言われて、く、と拳を作る。
話の展開が恐ろしすぎて反応が遅れてしまった。

「まぁ、ご褒美ってことで。
いつかの約束な」

頭をポンポンと撫でる諸伏さんは、多分私のことを同じ年齢だと思っていない。

「私のお兄ちゃんは研にぃだけだよ」

思わず言うと、諸伏さんはあはは、と笑う。

「ホント、仲良いよな。
俺とは友達として仲良くしてね」

もー、と言うとまた私の頭を撫でる。
スキンシップが過多すぎる。

「…同い年に対するスキンシップじゃなくないか?」

そんな私たちの様子を見てそう言う降谷さんに頷く。

「ほんとに!
もっと言って!」
「ゼロも少し付き合えばわかると思うよ。
年下感があるって」

嬉しくない!
近くにいたハロをぎゅっと抱きしめる。
その小さな体に頬を寄せて私は呟いた。

「ハロ、助けて…。
仲間がいない」
「僕は仲間にならないのか?」
「降谷さんはいざ付き合いが長くなると、一番年下扱いになりそうで」

研にぃより子供扱いされそう、と心中呟く。
さっきまで普通だった降谷さんの口がまたへの字に曲がる。

「でも、案外ゼロが一番同い年として扱ってくれるかもね」
「さっきと言ってること違うけど?」
「さっきはあくまで感覚がわかるって話。
実際にどう扱うかは別の話だよ」

…まぁ、言いたいことはわかる。

「私は同い年です」

なむなむ、と頭を下げると、わかってるよ、とぶっきらぼうに返された。



結局、夕食まできっちり頂いてから私は帰宅することになった。
諸伏さんに家まで送って貰うことになって、道中会話が続く。

「萩原にとっても、俺にとっても、ひなちゃんって妹や年下の友達って感じなんだよね」

ふと、そんな中で先程の会話がぶり返された。
どうしたんだろうな、と思って続きを促すと、だからさ、と前置きを置いて彼は言葉を続ける。

「あいつとは、対等な関係でいてほしい」

対等な、関係。
それは酷く難しい言葉に聞こえた。

降谷さんは憧れだ。
その時点で格上に見てしまうようなものだ。
それに。

「ダメだよ。
私は、あの人の幸せを願ってしまうから。
あの人が今望むのは、あの人自身の幸せではないでしょ?」

形ばかりの対等にはなれても、きっと本当の対等になんかなれやしない。

「それでも、信じてるんだ。
ひなちゃんなら、きっとあいつと対等になれるって」

諸伏さんの言葉に、私はただ苦笑しか返せなかった。