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バァボンは、お願いした次の日の午後、私を水族館に連れて行ってくれた。
最初は車いすを借りてくれるって言っていたけれど、私は断固拒否した。
どれだけ疲れても、彼の隣を歩いてみたかった。
街を歩くたくさんの女の子たちみたいに、過ごしてみたかった。

小さな水槽の中にいる魚。
大きな水槽の中にいる魚。
今まで見たこともないたくさんの種類の魚が、たくさんの色に輝いていた。

これの何が楽しいんだろう、と正直思うところもあったけれど、キレー、とかはしゃいでみると思ったことだけ言えばいいですよ、とバァボンに言われてしまった。
どうやら、私が実は何も感じてないことはバレているようだ。

「ねぇ、バァボン。
私、そんなにわかりやすい?」
「目がいつも変わりませんから」

目…。
自分の目をむにむにと触ると、バァボンはくすくすと笑った。

「マッサージもいいですが、今は魚を見ませんか」

確かに。
私が目元から手を放して水槽にかじりつくとバァボンがまた笑う。

「…バァボンはよく笑うわよね」
「えぇ、楽しいときや面白いときは笑うんですよ」
「楽しい…面白い…」

それは、なんなのだろう。
バァボンは冷徹と言われているし、任務の時はその一面しか見ていなかったから考えることはなかったけれど、一緒に暮らすようになって考えるようになった。
彼は、思ったよりも感情が豊かだ。
いつか私にもわかるときが来るのだろうか。

そんなことを思いながら、私はたくさんの水槽を眺めていた。

でも、最後のおおきな、ひときわおおきな水槽を見て、私は息を飲んだ。

天井近くから差し込む光が宗教画のようで、キラキラと眩しい。
平日で人が少ないこともあって、神聖さが増している。

「…すごい」

思わずそう呟くと、バァボンが横からスティル、と私の名前を呼ぶ。
それにも反応ができないくらい、私はずっとその景色を見ていた。