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数時間の後、烏丸蓮耶をはじめとする幹部の捕縛が成し遂げられ、僕にとっては五年の戦いが終わりを告げた。
スティルのパソコンは公安の指揮の元、デスクトップごと警察庁へと運んだ。
そこでヒントをもとにパスワードを考え始めるが、比較的簡単にわかったように思う。
あの流れて、彼女が僕の知らない言葉をパスワードにしているはずがないのだ。
「ママ…、vermouth」
ベルモットはあのあと、江戸川コナンを庇って死んだそうだ。
ベルモットが「彼女といると穢れる」と言っていた。
それはきっと、「ベルモットが」穢れるのではなく、「スティルが」穢れる、と言っていたのだろう。
ぎこちない二人だった。
もしも天国があるとしたなら、彼女たちは今までとは違い、良好な関係を築けるだろうか。
ママと電話していた時の彼女は、普段よりも穏やかに見えた。
そうだと、いい。
ロックが解除され、多くのリストが羅列されている。
NOCだけでなく、彼女が今まで手に掛けた人が並んでいるようだ。
一番上のデータはキュラソー、日本警察へ。
次にあったのはキュラソーの事件の時に殺害された三人だ。
悪どい事をやっていた下っ端や不良崩れを除けば次は、シェリー、ママ・バーボンによって殺害、ミステリートレイン。
ライへと続く。
スクロールをしていけば宮野明美の名前もあった。
明美は、ジンと彼女が埠頭の傍で殺害したはずだった。
だが、彼女の名前と組織での情報が入っているほかに記載があったのは殺害方法ではなく、住所だった。
埠頭とは違う、埼玉県の住所だ。
宮野明美とは関わりのないはずの、埼玉県の住所。
何人か、同じようにNOCで殺害方法の書かれた者と住所が記載されている者と分かれている。
まさか、と自分の中の仮説が組み立てられる。
スクロールを数年前まで飛ばし、スコッチの文字を探す。
覚えのある名前と、顔写真の横に、群馬県の住所が記載されている。
「まさか」
電話で風見を呼ぶ。
風見が来るまでにリストを一番下まで送り、最初の一人を見た。
写真はない。
二城ひなという、日本人の名前。
齢二歳の児女は、殺害欄に記載はなかった。
殺害欄どころか、名前と年齢以外、何も記載がない。
スティルの年齢と二城ひなの年齢、殺害時期から想定するに、きっとスティルこそが二城ひななのだろうと、想像がついた。
到着した風見にリストに記載の住所をリストアップして、各国に伝えるように言づけて、僕は車に乗り込んだ。
群馬県まで、二時間半。
どんな瞬間の一秒よりも、ヒロがスティルに攫われてからの二年よりも、長く感じた。