心に傷がある子供の段

学園長先生たちに報告した後僕は負傷した子供を保護している医務室へと足を運んだ

すると中から小さな気配がモソモソと動いているのを感じて起きたんだと思って部屋をそっと開けてみると彼女は布団から起き上がっていて僕に背を向けてうつむいて立っていた。


部屋に入ってすぐにわかったのは血の匂いがするということ
そして彼女は立ったまま動かない
様子がおかしいことに気づいた

もしかして傷口が開いたのかと思い気配をつい癖で消しながら近づいてみると彼女は小さな掌にガラスの破片を手にしていた

彼女は掌をぎゅっと握ろうとしていたのかポタポタと血が流れている

彼女は手負い、そして幼い子供
戦争孤児なのか‥‥わからないけど何らかの理由で心に傷を負っているのはわかる。

でも、だからといって「自害」をしちゃいけない!!

小さな命を守るために彼女の手首をぱしっと掴んだ。

伊作「駄目だよ」

小さな瞳は眼を見開いて唖然としていた
僕はその隙にガラスの破片を手から離して庭に投げ捨てて血止めをして包帯を巻いた

「割れた破片掴んだら怪我をしちゃうじゃないか!?

あぁ!血がでてるよ!?どうして危ないことをするんだい?」

「‥‥して?」

今まで開かなかった小さな口から震える声で幽かに聞こえた

「‥‥ん?」

僕は思わず聞き返した。

「‥‥どうして、‥‥たすけるの?」

「‥‥え?」

「‥‥ぼく‥‥は、‥‥たすける‥‥かちなんて‥‥ないのに」

小さな子供から発せられたのはその子が今まで育った環境を物語っていた。

その子は助けないのが当然だとでもいうように悲しげな表情で僕のことをじっと見つめていた。

僕が答えるのは一つだ


伊作「僕が保健委員だからだよ!」
と笑顔で答えると…意外な言葉だったのか「へっ?」と唖然と返す。

そのぽかーんとする表情は年相応でかわいく見えたので頭を撫でながら微笑む

伊作「僕らはね、怪我した人を手当てするのが仕事なんだ。

だから目の前で傷ついて倒れている人がいるのに見過ごすことなんて‥‥僕には出来ないんだよ」
「‥‥!」

そう、僕は君を助けたいんだ‥‥
このいつ死ぬかわからない乱世の時代の世の中で死ぬななんて無責任なことは言わない。
戦争孤児だったきり丸や他の子たちだって生きようと努力しているんだ‥‥

だけどこの子だけは違った
自らの命を絶とうとしていた‥‥

まだ8つくらいの年頃きり丸たちよりは年下みたいだ
辛いことが沢山あったのかもしれない
だけど、辛いことばかりだけじゃないんだ幸せだってこれから沢山訪れる‥‥

だから自分から消えようとはしないで欲しい。


伊作「だからね‥‥今は無理でも少しずつでいい

生きようとしてくれないかな?

辛いことばかりだけじゃない、楽しいこと嬉しいこと、これから沢山出来るんだよ?

ゆっくりでいいから‥‥頑張ってみないかい?」

「‥‥‥‥!」

小さな子供は僕の語り掛けに弱弱しくだが、しっかりと頷いてくれたのを見て僕はもう一度抱きしめた。

この子を守りたい‥‥

そう強く心の中で思う僕であった

きっとこの様子を留さんたちがみているだろうけど僕は気にしない‥‥。

この子は幸せになるべきなんだ

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