編入生の案内の段 土井side

学園長の思い付きで異世界から来た身元不明の子供を保護するという形で忍たまへ編入させることになってしました‥‥。
しかもは組ときた‥‥また、色んなことがありそうな気がして胃が‥‥

まぁ、は組の子たちよりは大人びているから大したことはないと思うが‥‥

それより私が心配しているのは彼女の心だ

昨日自分の力を嫌われるとわかっていながら見せた勇気に思わず驚いていた。
庭にあった小石を手も触れずに瞬間移動させて学園長先生のところまで持ってきたのだから‥‥本当に不思議な力だ‥‥

乱太郎たちから聞いたのは
山賊5人くらいの人間をあっという間に蹴散らしたということだった。
何はともわれ乱太郎たちを助けてくれた子供だ‥‥
疑いたくはない‥‥。
恩をあだで返すようなものだ‥‥。

学園長先生との会話のさなかで危惧していたのは安藤先生のあの言葉…

安藤≪信じるのですか!?学園長先生!いかにも怪しいこの子供の話を!?

あの力だってまやかしデス‥もしこれ以外にも複数扱えるのだったら
尚更学園に危害が及びますぞ!

それに、こんな力を持った子供なんて‥‥まるで「化け物」じゃないですか?!≫

あの時のあの子の表情が今でも忘れられない‥‥
光のない青い瞳。それはまるで‥‥受け入れてくれないことをわかっていたけど少しは期待をしていた‥‥があの言葉での落胆の表情は‥‥「絶望」だった。

あの子は気づいていかもしれないけど‥‥

聲には出していないが‥‥

≪やっぱり‥‥ここでも‥‥僕は、「化け物」‥‥なのか≫

という言葉‥‥。

彼女はあの力を持つことで色んな嫌なことをされてきたのだろう‥‥。
もう生きることを諦めているようにも見えた‥‥。

乱太郎たちより年下の子供‥‥

ただ、人とは少し違う力を持っているだけで忌み嫌い蔑み追い出そうとするのが
人間の本能。

この時代でも珍しくはない‥‥。

彼女の身体の傷のことは伊作や新野先生から聞いた。
至る所に殴られた跡や刀の切り傷があったと。
手首には縛られていた痕も残っていたそうだ。

あの子は今どんな気持ちなのだろうか‥‥
ただでさえ、嫌な生活を強いられてきたというのに異世界へ飛ばされて
そこでも化け物と呼ばれ今天涯孤独という絶望を味わっている‥‥。

あの子は‥‥「幸せ」を知らない‥‥「愛情」を知らない
「友情」を知らない‥‥「仲間」を知らない‥‥「家族」を知らない‥‥
「感情」を知らない‥‥。

せめて、ここで私の教え子として生活するからには‥‥
今まで知らなかったことを少しずつ知っていてほしいと願った。

翌朝学園長先生に傷の家具合で調子が良ければ案内と教室への案内も頼まれた。

医務室へ向かうと伊作と雪奈が廊下の前に立っていた。

土井「お、伊作と雪奈じゃないか‥‥もう出歩いていいのか…?」

伊作「はい、新野先生に許可をいただいたので」
土井「なるほど、なら丁度よかった部屋を案内するからこっちに来てくれ」

「はい」

土井「ここがお前の部屋だ‥‥
生憎一年生の長屋は空きが無くてな‥‥離れていて申し訳ないが
上級生の長屋に近い部屋になる。

その近くには事務室と職員室があるから何かあれば遠慮なくきなさい」

「はい‥‥」

表情はほぼ無表情だけど少し俯き加減で何かを考えている様子だったので「どうした?」と声をかける。

「‥‥ぁ、‥‥ぃぇ‥‥」

土井「何でもないわけないだろう?‥‥不安があるのか?」

「‥‥はぃ‥‥正直にいえば‥‥寝ている間に殺されないか‥‥不安です」

淡々と話す彼女の不安と心配ももっともだと思った私は「あぁ〜‥」と納得したように頭をかきながら困った表情をしていた

土井「さすがのあいつらも‥‥一年生の編入生を襲ったりはしないと思う。

君が変な行動をとらなければ…いずれ誤解は解けるだろう…
警戒もな‥‥しばらく辛抱してくれ‥‥」

「‥‥はぃ‥‥まぁ、見張られるのには慣れているので問題ないです」


困ったような表情をしながら微笑んだ、というよりかなり無理した作り笑いになっていると思うが‥‥あえてなにも言わなかった。

一通りの案内をし終えるとカーンカーンという鐘の音が鳴り響いた。
授業が始まる合図だ‥‥まずいこうしちゃいられない‥‥
一時間目は座学だ‥‥。

土井「まずい、そろそろ授業が始まる時間だ

雪奈これが教科書だ‥‥」

そういって持っていた「忍たまの友」を渡す‥‥
速足で一年は組の教室の前にたどり着く

土井「ここが、一年は組の教室だ‥‥少し待っていなさい合図したら入ってきてくれ」

「はぃ‥‥」

教室に入るとまだざわざわと雑談している生徒たちがいるので戻るように指示をしながら居卓の前までつく。

土井「お〜い、席につけ…授業を始めるぞ〜」

乱太郎「土井先生!」

土井「なんだ?乱太郎‥‥」

乱太郎「あの‥‥あの子‥‥どうなりましたか?」
きり丸「あ、それ俺も気になってた!」
しんべヱ「元気になったの!?」

土井「あぁ〜待て待て‥‥実は今日から新しい編入生を紹介するぞ〜

入りなさい」

ガラガラと静かに入ってきたのは乱太郎たちが心配する張本人だった。

私の隣までやってくると静かに前を見つめた
私は黒板に名前を書きだす「疾風 雪奈」と‥‥。

土井「皆も知っているとは思うが‥‥学園長の提案で一年は組の忍たまに編入する形となった。歳はお前たちよりも二つ下だ。

しっかりフォローしてやれよ?それじゃあ‥‥自己紹介を頼む」

「‥‥疾風 雪奈です‥‥迷惑をかけるかもしれませんが‥‥よろしくお願いします」


とぺこりと小さく頭を下げるとパチパチとパラパラ拍手が起きる。


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