襲撃の段
森に入ってから数分が経った頃何かを思い老けていた奏多も忍びの気配に気づいていたらしく僕の後ろを走っていた距離から少しずつスピードを上げる。
直ぐに僕の真横まで追いついてきて僕にだけ聞こえるように言う
奏多「若様…どうやら、この気配何者かにつけられているようです
恐らく他里の忍びのものだと思われます…」
「それじゃあっ…」
蒼穹の手綱を握る手を強く握りしめる。
もしかしたら最悪の場合此処で二手に分かれてしまうのかもしれない…。
忍術学園まではあと少し距離がある。
奏多「大丈夫です…私がそう簡単にやられるような忍びではないと若様もお判りでしょう?」
僕は蒼穹を走らせながらうなずく。前を見ているために奏多の顔は見えないが恐らく僕の顔を優しく微笑みながら見ているのだろうと思う。
奏多「なら、大丈夫です。忍術学園まではあと少しですが…若様ならたどり着けると信じております…一旦はここで別れましょう!!
私が食い止めておきますので…決して振り返ったり足をお止めにならぬようにお願いします」
「…っ、わ、わかった!奏多も…きをつけて?」
奏多「はい!必ずや忍術学園で合流しましょう!!」
「うん」
僕の返事を合図に奏多は蒼穹の尻の部分を強くたたくと蒼穹がそれに答えてさらにスピードをあげる
「うわっ!!」
急にあがるスピードに振り下ろされそうになりながらも落とされぬように必死にしがみつく。
後方からカキィインカキィインと金属同士がぶつかり合う音が聞こえる
ちらりと視線を後方に向けると奏多と赤い忍服とサングラスが戦っているのが見えた
どこかで見たことのある相手だと思いながらも奏多の言われたことを思い出し忍術学園を目指す。
森を駆け抜けていくとまた別の方向からも複数の人影を察知した。
さっきは忍び装束が赤色だったが、今度は地味な色で茶色のような灰色のような服で目元までマスクで覆われていて顔が見えないが恐らく奏多がいう、「他里の忍び」だろう。
まだほかにもいたとは…。
でもここで捕まるわけにはいかない僕は手綱を強く握りしめて蒼穹に「お願い」と声をかけると「任せろ」とでもいうように答えて鳴く。
どこからか手裏剣が飛んでくるがそれを必死に避けるがいくつかの手裏剣は二の腕にかすり傷だがあたってしまった
「っ!?」
痛みでつい目をそらしてしてしまった次の瞬間ふわっと体が宙に浮き蒼穹の背中から投げ飛ばされてしまった。「…ぅぁ!!」投げ飛ばされた体は落ち葉が沢山落ちている地面に投げ飛ばされその勢いで地面をすべるように木に背中をぶつけてしまう!!
ドスッ
「っぅ!!…ぐぅ、…ぁ」
蒼穹も主がいなくなったことによりバランスを崩し倒れていた。
「…そ、…ら」
痛む体を押さえながらよろよろと立ち上がろうと踏ん張るがなかなかに力が入らない。
匍匐前進するように少しずつ蒼穹にむかって体を引きずりながら前へ進む。
ザっと人が降り立った音が聞こえて顔をあげると先ほどの忍びが目の前に立っていた
じーっとこちらを見つめて何もしようとしない…かと思いきや手をそっと僕に向かって伸ばしてきた。「捕まる」そう思い目を強くつぶると「ギンギーン」という謎の声が聞こえてきたと思えばガキィインという金属がぶつかったような音が聞こえてきた。
ガキィイン
「おい!お前侵入者だな!?ここで何をしている!?」
誰かに怒鳴るような声も…謎の威圧を感じながらも誰かが助けに来てくれたと思って安心してしまった。だが、相手は何も言わずに静かにその場から去っていった。
助けに来てくれた男の人は「待てっ!」と追いかけようとするも足を動かそうとはしなかった僕のほうに視線を送りちっと舌打ちしながら手を差し伸べる
「…おい、…坊主っ立てるか?」
「…ぇ?」
顔を上げると目の下のほうにクマをつくった顔の怖いお兄さん?だったからだ…
唖然としている僕にしびれを切らしたのかぐいっと僕の二の腕をつかんで体を起こさせるその時にさっき掠った場所が痛み思わず「痛っ、」と声を上げるとつかんでいた二の腕を慌てて話してくれた
「わ、悪い…ケガしたのか?」
「…だ、大丈夫です…ただの…かすり傷ですから…
あ、…あの!」
「…ん?」
怖い男の人に声をかけるのは初めてだが助けてくれたことには変わりはないのでお礼を言うのが礼儀だと思い勇気を振り絞る
「…た、助けてくださり…ありがとうございます!」
ぺこりとお辞儀しながら泣きそうになるのをごまかした。
「あ、…あぁ…べつに大したことはしていない…ところでお前なんで「黄昏時」に襲われていたんだ?しかもこんなところでなにをしているんだ?」
クマの男は抱いていた疑問をこちらにぶつけてきた。
「…た、…たそがれ…どき?ですか?」
「あぁ、あれは黄昏時軍の忍者隊の奴らだったな…お前なにかしたのか?」
「い、いえ!?僕は別に何の面識もないですし狙われるようなことは一度もしていないですよ!?…ただ…」
「ただ?」
「……僕は別の忍びからも狙われていたようで…先ほど付き添いの忍びの者が対峙しにいってくれたので僕と離れ離れになってしまったのですけど…」
「なに?!別の忍びからも…だと?!…お前、なにものだ?」
警戒する姿勢と視線で僕は思わずびくっとなってしまうのだが…話さないと失礼かもしれないので……勇気を出して伝える。
「…ぇっと…ぼくは、北の大地にある…神牙の国からやってきました…
城主の父上から東の地にある忍術学園までお使いをしてほしいということで僕の世話係の忍び「奏多」と一緒に旅をしてきたんですが…。
忍術学園に近づくにつれて先ほどのように忍びに狙われ始めたのです…
それであなたに助けてもらいました…」
と一つ一つ説明をしていくと…「信じられん」と渋い顔をしながら顎に手を当てて考えながらこちらを見ていた。
「その、証拠はあるか?」
証拠?…証拠といえば…服についている家紋と文についている家紋と忍術学園の学園長にあてられた手紙だけなんだが…。
「証拠と…言われましても…。この家紋と手紙でわかってもらえないでしょうか?
生憎僕はほかには持ち合わせていないので…汗)」
と家紋のついた手紙を見せると裏表をみて…「うん、本物だな」と納得したのかこちらに返してくれた…
「中身読まなくていいんですか?」
と聞くと本物であるとはわかる、それに学園長先生宛に出されたのを許可なく勝手に見たら怒られるとのことだそうだった。それは大事にしまっておけと言われたので懐にまた手紙を入れなおすと名前を聞かれた
「……疾風 蒼真です」
「俺は忍術学園の最上級生で六年い組の「潮江文次郎」だ…
学園まで案内するからついてこい」
「はい、ありがとうございます…あ!蒼穹っ、無事だったんだね?ケガはない?」
と聞くと蒼穹はどこもケガをしていないようで転んだだけのよう…元気よく鳴いて答える
文次郎「それは、お前の馬か?」
「はい!相棒の蒼穹といいます。この子も連れて行っても大丈夫ですか?」
文次郎「ああ、大丈夫だろう…学園にいる間は生物委員に馬の世話を任せるといい」
「生物…委員?」
聞きなれない単語に首をかしげると行けばわかるといわれたので蒼穹にまたがって潮江さんの後をおいかけて無事に忍術学園にたどり着くことができたのだった。
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