目が覚めると朝だった。リドルに秘密の部屋に連れられたのは朝のことだったから、それから1日は経っていることになる。
真っ白な天井は見覚えがないが、漂う薬品の匂いから医務室だと予想する。
「おや、目覚めたかの」
シアは声のした方を見る。
「ダンブルドア校長……」
「ほっほ。どうやら意識ははっきりとしているようじゃの」
ダンブルドアは嬉しそうに笑う。
シアは状況が分からず、困惑した。
それを感じ取ったのか、ダンブルドアが説明する。
「きみは、ジニー・ウィーズリーと共に秘密の部屋へ連れ去られたのじゃ。ハリーが来たときには目覚めていたようじゃが、その後意識を失ったようじゃの」
ああ、そうだった。シアの耳に未だにこびりついているリドルの絶叫。リドルが消えたのを確認した途端、シアは意識を失ったのだ。
「思い出したかの?できれば、どうしてトムが君を連れ去ったのか聞きたいのじゃが…」
ダンブルドアは優しそうな顔をしているが、瞳は鋭い。嘘をつく必要はないが、嘘はつけないだろうな、と思いながら、シアは知っている限りの情報を話す。
「……わたしが、彼に似てるかららしいです。わたしとヴォルデモート卿との関わりを知りたいようでした。けれどわたしはヴォルデモート卿の名前すら知らなかったので、何も答えることはありませんでした」
「…………そうかの」
「ヴォルデモート卿」という言葉が出たと同時に更に鋭くなった瞳は、シアが話し終わる頃にはその面影もないほど優しいものになっていた。嘘をついてないと判断されたのだろう。シアはそっと息をついた。
ダンブルドアは言葉を続ける。
「……トムを見て、どう思ったかの?」
シアはリドルを思い出す。初めて姿を見た図書室。初めて本性を見たトイレの前。そして秘密の部屋での最期。
「…………わたしと見た目は似ているけど、それ以外は似ていません。彼は、ちゃんと喜怒哀楽がありましたから」
「………そうかの」
ダンブルドアは感情の読み取れない瞳で言う。
「わしはもう帰ろうかの。どうやら外に君を待つ人がいるらしい」
ダンブルドアは立ち上がって扉へ向かった。ダンブルドアが扉を開けると同時に、外にいた人物がダンブルドアに話しかけた。
「校長先生!シアは……」
「中におるよ、ミスター・ディゴリー。入っておやり」
セドリックはダンブルドアに一礼してシアの側に寄って来た。
シアのベッドの横につくと、セドリックはシアを抱きしめた。
「良かった…。君がいないって分かったとき、どうしようかと……!君、1週間も眠っていたんだよ!」
「1週間……?」
「そう!もう石になった生徒も退院しちゃったんだよ!ポッターも一緒に連れ去られたウィーズリーも退院したのに、君だけが目を覚まさないから……!」
セドリックの締めつけがきつくなる。うめき声が出たのは仕方がない。
「………心配かけてごめんなさい。わたしは大丈夫」
「本当?」
「うん。だから手を離して」
セドリックは慌ててシアを解放した。シアはほっと息をつく。
それにしても、何もされなかったのに何で眠っていたのだろうか。
「ディゴリー!彼女は目覚めたばっからしいじゃないですか!まだ面会はダメですよ!」
どこからか現れたマダムポンフリーにセドリックは追い払われる。
「後でまたお見舞いに来るから!」
そうセドリックが言い切ると同時に、医務室の扉はしまった。
その様子にシアは胸が暖かくなった。