シアは強い日差しを浴びながら、珍しく孤児院の外へ出かけていた。理由はリドルの媒介を探すためだ。
媒介といってもリドルにはリドルなりの矜持があるらしく、シアが紙切れで済ませようとしたところかなり怒られた。せめて綺麗な石を加工したもの、と言われたものの、シアは加工できるほどの技術もお金もない。
完全に行き詰まっていた。
「別に何でもいいと思うけど」
「五月蝿い。君は物事に頓着しなさすぎだ」
リドルは堂々とホグワーツの制服姿のまま出歩いている。何度か実験した結果、リドルの姿は彼自身が意識しない限り見えないまま、ということが判明した。だからホグワーツの制服姿のまま出歩いても大丈夫なのだ。
傍から見たら独り言を言ってるように見えるだろうな、と思いながらシアは適当に歩く。ウォーラム孤児院は届け出をすれば外出は自由だ。今までその届け出を利用しなかったシアが突然利用した、ということで、本日は朝から変な目で見られた。
「それにしても盗めばいいのに。君は勇気がないね」
「勇気がないからハッフルパフなの。それに盗むのは後々めんどくさい」
良心の問題ではなく、後の始末の問題だ。同じ孤児院の子から盗んだとしても、それをいつもシアが身につけないといけないのですぐにバレるし、盗んだことがバレてセドリックに迷惑をかけたくない。
「……君、本当にあの男しか友人いないんだね」
「うん。別に必要ないから」
リドルが憐れむような目でシアを見た。いや、実際憐れんでいた。いったいこんな人格を作ったのは誰だろう、と思う。人として成立していなさすぎて、軽んじるのを通り越してもはや憐れみしか抱かない。抱けない。
「……で、あなたの望む媒介を手に入れる方法は?」
まるで今までの会話をどうでもいい、とでも言うような態度に、リドルは呆れる。
「幾つかあるよ。まずひとつ目。とっても良識的な方法。君が体を売ってお金を稼いでそのお金で買う」
「めんどくさい」
ばっさりと切り捨てた。彼女の気持ちを探ると、どうやら本当にめんどくさいと思うだけで、体を売ることに関しては何とも思ってないらしかった。
リドルはため息をつく。なんて厄介な少女と共にいることになってしまったのだろう。まともな人格じゃないから操るのが難しい。
「じゃあふたつ目。どこかの誰かと仲良くなって貢いでもらう」
「めんどくさい」
先程と同じ返事に呆れる。めんどくさいかもしれないが、お互いのために早く見つけた方がいいことは分かるだろうに。
「わたしはそこまで必要性を感じないから」
そう言われてリドルは顔を歪める。先程からお互いの気持ちが混ざっている。まるで自分の考えなのか、はたまた相手の考えなのか分からなくなることに苦労しているのはリドルのみだというような口ぶりだった。
何となく悔しくて、リドルは舌打ちをする。
「そんな短気で、よく騙せていたね」
シアの言葉は心の底から思っていることで、リドルはそれは気を抜いてるからだ、などとは悔しくて言えない。
代わりに別のことを言う。
「君も随分と話すようになったね」
「慣れたから」
淡々とした返事にリドルは怒りを覚えた。本当に、彼女は操りにくい。まるで人形だと思った。
「……本題に戻って、みっつ目。これは最終手段だけど。君の友人に頼む」
「なら貰えるのはかなり先ね」
「それが嫌なんだよ……」
リドルは不機嫌になりながら言った。リドルにとっては最終手段だが、シアにとっては最も楽な手段であった。
「じゃあそれにしよう。外出した意味なかったね」
「意味はあるさ。どこかの店に行って、どんな物がいいのかだけは考えておかないと。3年生ならホグズミードに行けるようになるから、そこで買うといい。君の友人の性格からして、きっと最初のホグズミード行きは2人っきりだろうからね」
「あなたもいるから3人ね」
「彼には見えないからいいんだよ」
リドルはむしゃくしゃしながら言った。