「あー、本当に疲れる」
シアだけにしか見えない状態で、リドルが悪態をつく。彼は手で頭を抑えていて、傍から見れば頭痛がしてるだけのようだ。といっても他の人には見えないが。
「お疲れ様。あと数ヶ月よ」
「誰かさんが面倒くさがらなければ今ごろ僕は快適な生活を遅れていただろうにね」
「誰でしょうね」
リドルはため息をつく。付き合いきれない、とでもいうような雰囲気だ。
シアはその様子を眺めながら、トランクを持ってキングズクロス駅の中を歩く。リドルがいつの間にか電車の運行表を調べており、例年よりも費用が安く済んだ。その代わりに駅で寝ることになったのだが、安く済んだ分はいずれどうにかしてリドルに返そうと思う。
シアはいつも通り、柱の中に腕が入ることを確認してから、柱を通り抜ける。
9と3/4番線のプラットホームはいつもと変わらず混んでいて、あちこちで家族が固まって別れを惜しんでいる。シアはそれを冷たく一瞥して、ホグワーツ特急へと乗り込もうとした。
「シア!」
シアは驚いて振り返る。そこにはセドリックがいて、こちらへ向かってきていた。
「セドリック。久しぶりです」
「うん、久しぶり。元気にしてた?」
「はい」
シアがそう言うとセドリックは破顔する。そしてシアの持つトランクを目敏く見つけ、
「運ぶの手伝うよ。貸して」
そう言ってひょいっと持ち上げた。教科書や1年分の衣服などが入っているため決して軽くはないのだが、セドリックはそんなことを感じさせない。
「誰かいつも一緒に座る人はいる?」
シアはその質問の真意を読み取って言う。
「いませんね。だからどこのコンパートメントでもいいですよ」
「そっか。なら僕のところ来る?」
「遠慮しておきます。セドリックは同学年の友人たちと座るのでしょう?そこに下級生がはいるのは何かおかしいです」
「うーん。僕とあと2人だけなんだ。そこにシアが入っても大丈夫だと思うよ?まあ全員男だけど」
セドリックが苦笑しながら言う。当然、彼が今日も多くの友人に囲まれていると思っていたシアは、その内容に驚く。
セドリックはシアが黙ったことから、その驚きようを察して笑った。
「驚くことかな?」
「はい。いつもセドリックは多くの友人と一緒なので」
「友人、ねぇ……」
セドリックは乾いた笑顔を浮かべた。
シアは何となく思い至った。有名人とは意図しなくても周りに人が集まるものだ。そしていつの間にか周りを固められ、そんなに親しくない友人たちと過ごすことになる。それはとても息苦しい生活だろう。こんな表情を見せるくらいだから、自分は信頼のおける友人だと思いたい。
ふと、どうして今までそこに思い至らなかったのか、とシアは疑問に思ったが、たまにあることだとスルーする。
しばらくして、セドリックがちゃんとした笑顔を向ける。
「じゃあ、僕のところにしようか。こっちだよ」
返事をしていないのに強引に連れていかれるシア。釈然としないが、まあいいか、と思った。
「うわー!セドリックが女子と2人っきり!もしや……っ!」
「君の思ってるような関係じゃないから、アルフ」
「だけどだけど!」
「アルフ、黙れ」
「いって!殴るんじゃねぇよ、ラザレス!」
ギャーギャー騒ぐ上級生3人を見るシア。じっと見ていたせいか、一斉に3人がシアの方を向く。
「ランドールだったよな?いやー、それにしてもびっくりしたぜ!来てみたらセドリックが仲良く女子と2人っきり!」
「それいつまで言うの」
セドリックがため息をつく。シアは目を白黒させてそれを見ていた。いつもの友人たちと接するときとはどこか違うセドリックに、どこか深い感銘を覚えた。
「ああ、そうだ。紹介してなかったね。こっちのグリフィンドール生がアルフで、レイヴンクロー生がラザレス」
セドリックがネクタイの色の違う2人を紹介する。
「アルフ・アルバータ。グリフィンドールだからあんまり関わらないだろうけどよろしく!」
「……ラザレス・スタンフォード。よろしく」
「……シア・ランドールです。よろしくお願いします」
「はいはい、堅苦しい返事はなし!もっと砕けた感じで!」
アルフがシアの肩をバシバシと叩く。
「………よろしく?」
「おう!よろしくな!」
にかっと笑うアルフに、シアは新鮮さを感じる。こんなふうに初対面から親しく接してくれる人はいなかったからだ。
「アルフはホグワーツに入学する前からの友人で、ラザレスは1年生の頃図書館で出会ったんだ。寮が違うからあんまり関われないけど、誰よりも親しい友人たちだよ」
セドリックが笑って言った。
シアはセドリックの言葉に「良かったですね」と返した。セドリックはその言葉に破顔した。