組み分けの後は夕食だ。
その前に短く校長が話したものの、それもほんの数秒のことだった。その後シアをチラッと見たものの、シアは相変わらず無表情だ。
「こんばんは。私はハンナ・アボット!よろしくね」
「………シア・ランドールよ」
シアはそれだけ言って、再び料理に手をつけた。話す気はない、ということを行動で示している。
ハンナは眉をひそめながらも、再びシアに話しかけた。
「シアね!あなた本当に綺麗よね!見た目だけでなく声も!あなたと同じ寮になれて嬉しいわ!」
「…そう」
再び沈黙がおりた。
ハンナはあからさまに不機嫌な顔をして、他の女子生徒に話しかけた。
それでもシアは表情を変えない。
幾人か、興味本位でシアに話しかけたが、シアが対応するとすぐに離れ、そしてそのまま夕食は終わった。その後は各寮へ行き、それぞれ割り振られた部屋で就寝だ。
奇しくもシアのルームメイトの中にハンナが居て、ハンナは気まずそうにしていた。
ルームメイトがおしゃべりしながら荷解きをしている中、シアは荷解きもそこそこにして寝た。
翌日からすぐに授業が始まった。
シアはどの教科でも手を上げて積極的に答えることもなかったが、全てを卒なくこなした。
魔法薬学では合同で授業を受けていたレイヴンクローの生徒よりも早く調合を終わらせ、変身術ではハッフルパフで唯一マッチ棒を針に変えることができた。更には妖精の魔法でも浮遊呪文を一発で成功させ、飛行訓練でもすぐに飛ぶことができた。
けれど友人と呼べる人物はいなかった。常に1人で行動しており、会話も一言二言のみで続かない。その容姿から声をかけられることが多かったが、1週間ほどで誰も声をかけなくなった。
シアは基本1人で図書室にいる。目に付いた本を片っ端から読んでいくが、大抵の内容が理解できた。
「ねぇ、この本借りてもいい?」
シアの目に入ったのはシアと同じ黄色のネクタイ。顔を上げるとどこか見覚えのある男子生徒がいた。彼が指しているのは、シアの近くにある既に読み終わった本の1つだ。
「……どうぞ」
「ありがとう。本当に勉強熱心だね」
「…それしか、することがないので」
シアのリズムの悪い返答にもニコニコして会話を続ける彼は、シアの目の前の椅子に腰を下ろした。
しばらく沈黙が続くが、彼は居心地の悪さを感じていないようだった。
2人が向かい合って読書している光景を見て、図書室に入ってきた生徒は驚き、しばらく2人をじっと見つめていた。が、2人ともそれを気にしない性格なので、ずっとそのままだった。
「そろそろ夕食の時間だ。一緒に行く?」
男子生徒がシアに話しかけた。シアは首を振って答える。
「分かった。じゃ、またね」
「はい」
それから2人は図書室から出て別れた。
そういえば名前を聞いてない、とシアが気づいたのは、寮に借りた本を置きに行ったときだった。