今年もハロウィンの季節がやってきた。
去年はトロールが侵入するという事件があったので、今年は多くの生徒がハロウィンを楽しもうと張り切っている。
噂ではダンブルドアが「骸骨舞踏団」という魔法界で人気のグループを呼んだと言われており、去年のことを忘れて楽しませようとしているのが慮ることができた。
「…殺してやる……殺す時が来たんだ…」
ハロウィンパーティーに向かう途中、シアは聞こえてきたおぞましい声に、思わず立ち止まった。その声にはぞっとするほどの殺意がこもっているように感じられた。低い、地を這うような声はどこへ向かっているのか、そのまま遠ざかって行った。
「シア?どうしたの?」
シアは後ろから話しかけられて振り返った。おそらく立ち止まっているシアを訝しんだのだろう。セドリックの周りに友人がいることから、ハロウィンパーティーに向かう途中だと察せられた。
セドリックにさっきの声のことを聞こうとしたが思いとどまる。さっきの声を聞いたのなら、彼はシアが立ち止まっている理由も察せられるだろう。セドリックはそういう人物だ。友達のいないシアにもちゃんと話しかけるのは、その思いやりのできる性格からだろう。まさに優等生だ。
その彼がもしさっきの声が聞こえていて、シアが立ち止まっている理由を察せないだろうか。おそらくそれはない。なら聞こえなかったのか。それもないだろう。シアが立ち止まっていた時間は短い。そのわずかな時間でシアに追いついたのなら、きっとそれほど離れておらず、声が聞こえただろう。
なら考えられるのは1つ。条件を満たした人物しか聞こえない声だ。その条件は分からないが、シアが聞こえてセドリックが聞こえなかったのは間違いないだろう。
「シア?」
「……いえ、なんでもありません。じゃあ」
シアはスタスタと歩いていく。条件付きの魔法なんてあるのだろうか。今すぐ図書室へ行きたいが、それは明日にでもしよう。
骸骨舞踏団の演奏は見事としか言いようがなかった。シアはプロの音楽を聞いたのは初めてだが、それでも圧倒的だということは分かった。
パーティーが終わり、いつもより興奮しながら寮へと向かう生徒たちに紛れ、シアは寮へ向かった。
しかしそれは途中で止まった。
列の前方では先程までの雰囲気が嘘のように変わっていることが分かった。
しばらくしてダンブルドアが他の教授を率いてやって来た。生徒たちは道を開ける。
道が開けたところからチラリと壁に書かれた文字が見えた。おそらく生徒たちはそれを見たから立ち止まったのだろう。いったい赤い文字で何が書いてあるのか。
時間が経つとダンブルドアや教授たちの後ろにハリー・ポッターたちが増えていた。彼らが壁に文字を書いたのだろうか。それにしては空気が重い。
「ハッフルパフ!別の道から寮へ戻るよ!」
監督生の言葉にざわざわと生徒たちが移動する。後方にいた生徒たちは何があったのかを聞く。
「寮に帰ったら説明するから!」
その言葉で、大人しくハッフルパフの生徒たちは寮へ列を成して戻った。
寮へ戻ると、すぐに問答が始まる。
「何があったんだ?」
「……壁に文字が書かれていたんだ。赤いペンキだった。『秘密の部屋は開かれたり。継承者の敵よ、気をつけよ』って…」
寮がしん、と静まりかえる。両親が魔法使いの生徒たちははその言葉に思い当たり、マグル生まれの生徒たちは何も分からずに困惑していた。
誰かが言う。
「秘密の部屋って……?」
「………分からない。けれど、恐ろしいものとして伝わっている」
「明日、ホグワーツの歴史を借りてくる!」
がやがやと再び談話室が声に満ち溢れる。
シアは冷めた表情をしながら自室へと戻った。